「文化財を科学するⅢワークショップ『AIとオープンデータが人文学を変える』」を開催しました

文明研究所とマイクロ・ナノ研究開発センターおよび JST創発的研究支援事業 「生物学と人文科学の融合:人類情報学(Anthropological Informatics)の構築」の共催行事としてでは1月31日にオンラインで、「文化財を科学するⅢワークショップ『AIとオープンデータが人文学を変える』」を開催しました。両研究所では本学が所有する文化財コレクションを高度な光学機器を使って分析し、古代の技術や用途の解明を目指す研究を進めています。その中で、デジタルデータをどのように活用できるかを考えようと開いた今回のワークショップには、約20名の研究者や学生が参加しました。

初めに文明研究所の田中彰吾所長が、「本研究所は本学が所蔵する文化財を科学することと、人文科学の基礎的な分野への学術的なアプローチによる解明がミッションです。そういった意味で今回の企画はとても関心の高い内容です」と期待を語りました。続いてROID-DS人文学オープンデータ共同利用センター長で国立情報学研究所の北本朝展氏が「デジタル・ヒューマニティーズ:画像公開方式IIIFやAIくずし字認識の発展から見えてくる人文学の新たな研究方法」と題して講演。「デジタル・ヒューマニティーズは、人文学研究にデジタル技術を導入することで、その研究方法を変革し、新たな知識を得ることです」と定義を語ったうえで、人文学と情報学の共同研究チームの必要性に触れ、「両者は関心のありかが異なるため、異文化への理解とゴールを共有できる相手が必要です」と語りました。国際的な画像配信方法である「IIIF(トリプルアイエフ)」について解説し、日本美術の絵本・絵巻物などから集めた9683件の顔貌を機械学習などに活用しやすい形式でオープンデータ化している「顔貌コレクション(顔コレ)」や、個々のデータにメタデータを付与した「メタデータによるファセット検索」も紹介。また、古典籍や古文書に用いられる漢字を崩した「くずし字」を解読する「日本古典籍くずし字データセット」「みを」の機能や精度なども解説しました。

その後は北本氏と本研究所所属の山花京子教授(文化社会学部)、企画者の一人である医学部医学科の松前ひろみ助教が中心となり、参加者を交えてディスカッション。「古代エジプトファラオの彫像が60個ほどありますが、データとして取り込んでAIで認識するには数が少ないように感じています。そういった場合でも情報学とのコラボレーションは可能でしょうか?」「機械と専門家の知識のコラボが大事という話がありましたが、次世代のDH(デジタル・ヒューマニティーズ)人材にはどのようなスキルが求められますか」などさまざまな質問が上がり、活発な意見交換が行われました。最後に松前助教が、「これからどんどんと広がっていく分野であり、講演を聞いてこれからどうしていくべきかという多くの宿題をもらったように感じています。今後ぜひ第2弾を開催し、皆さんと意見交換できれば」と語りました。