シンポジウム「 水中考古学と地球科学“文理融合から導く総合学術知”~各地から専門家が参集、地球と人類社会の関係を紐解く学術分野開拓の可能性を探る~」を開催しました

海洋研究所では3月12日に、静岡キャンパスでシンポジウム「水中考古学と地球科学“文理融合から導く総合学術知”~各地から専門家が参集、地球と人類社会の関係を紐解く学術分野開拓の可能性を探る~」を開催しました。本シンポジウムは、さまざまな視点や観点から水中考古学の手法について考え、地球と人類社会の関係を紐解く新たな学術分野の可能性を探るものです。当日は、4つのセッションを展開し、水中考古学と地球科学の研究に取り組む専門家ら11名が登壇。8号館のPLAT(ぷらっと)をメイン会場にオンラインでも配信し、約60名が聴講しました。

当日は、はじめに本研究所の平朝彦所長による開会のあいさつの後、「海洋環境変動とホモ・サピエンスの航海」をテーマとしたセッションを行い、国立民族学博物館の小野林太郎氏が趣旨を説明。静岡大学教授の山岡拓也氏が「黒曜石の考古学」と題して黒曜石の特徴や産地分析研究の成果を報告しました。続いて、海洋学部の坂本泉教授が流紋岩質マグマの急速冷凍で生まれる黒曜石の起源や、生成されやすい神津島の環境要因などについて解説しました。平所長は、「北米大陸における人類の拡散―海岸ルートの役割」と題して、ホモ・サピエンスが海を渡った渡航方法や手段を紹介するとともに、約2.5万年前から人類と大型哺乳類が共存していた記録について説明しました。次のセッションは、「海難事変と古海洋気象:蒙古襲来」をテーマに実施。人文学部の木村淳准教授による趣旨説明の後、國學院大學文学部教授の池田榮史氏が長崎県・鷹島海底遺跡周辺海域の調査結果について報告。また、京都大学名誉教授の増田富士雄氏が「古ストームイベント:堆積物からの解読」と題して、波の振動流で形成されるウェーブリップルが古来の地層に痕跡が残っており、波とは異なるストーム波も堆積構造から確認できることを説明しました。

続いて、「地震・津波・火山災害と水中考古学」と題したセッションでは、国立研究開発法人海洋研究開発機構上席研究員の谷川亘氏が趣旨説明。京都大学防災研究所教授の山﨑新太郎氏が桧原湖湖底遺跡研究での研究成果や展望などを紹介しました。さらに、谷川氏が「災害伝承から歴史南海地震にどこまで近づけるか」と題して、白鳳地震をはじめ過去の地震に関する伝承の調査結果や、埋没した人工物が海底表層に現れる仕組みを解説。最後に海洋学部の横山由香助教が、東北地方太平洋沖地震による湾内の地形変化について調査結果を報告し、津波堆積物の移動などについて説明しました。

最後には、「地球科学と水中考古学の推進」をテーマとしたクロージングセッションを開き、平所長による司会進行で各講演に対する活発な意見交換が行われました。