「2022年度アンデス・コレクション研究懇談会」を開催しました

文明研究所がマイクロ・ナノ研究開発センター(MNTC)、松前記念館と連携し、3月16日に湘南キャンパスで「松前記念館リニューアル企画展連携 2022年度アンデス・コレクション研究懇談会」を開催しました。本研究所は、1900点以上にのぼるアンデス文明由来の所蔵コレクションの資料整理や研究に取り組むとともに、MNTCの研究者らと協働してX線による真贋研究などを進めています。懇談会は、その成果を学内外に発信・共有し、研究をさらに発展させるために開いているものです。今回は、23年4月末まで開催している松前記念館リニューアル企画展「古代アンデスの音とカタチ」に合わせ、「国内のアンデス・コレクションとその活用例」と題して本記念館を会場に、オンラインも併用して開催。8名の研究者らが発表し、教職員や学生ら約15名が参加しました。

初めに、松前記念館の水島久光館長(文化社会学部広報メディア学科教授)が登壇。「現在、本記念館で開催中の企画展では、『音とカタチ』という人間の本質的な感覚が人々の生活や文化にどのような意味をもたらしたのか、歴史を遡りながら捉えようとする試みを紹介しています。こうした研究は、多様な人間を仲間として受け入れ、共に社会を構築していくためにも重要と考えます。今日はアンデス・コレクションに関するさまざまな研究発表や意見交換を通じて、文化や社会に関する学びを深めたいと思います」とあいさつしました。続いて、進行役を務めた文明研究所の吉田晃章准教授(文学部文明学科)が本懇談会の主旨を説明し、「国内の研究者からアンデス・コレクションの利活用の取り組みについて報告していただき、学問領域を超えたコレクション研究や所蔵機関の学術交流を図りたいと考えています」と語りました。

研究発表では、まず吉田准教授が、「笛吹きボトル制作ワークショップの展開―追体験から探る音色の認知―」をテーマに講演。土器の内部で水と空気が異動するときに音が鳴る「笛吹き土器」の学術的背景や聴覚の観点による研究の概要を説明しました。また、その成果を還元するための社会教育活動として2021年に開始した、盲学校や養護学校、特別支援学校におけるワークショップの様子を紹介し、「コレクション活用における障壁を取り除くためには、積極的な教育への活用、分離融合研究による検品、外部専門家との共同研究、ワークショップや企画展などのアウトリーチ活動が重要です。盲学校でのワークショップを通じて、視覚に偏重せずに遺物の研究に取り組む必要性も認識しました」と語りました。

続いて、美術館・博物館の学芸員や研究者ら7名が、それぞれの施設で所蔵している「笛吹き土器」を中心としたアンデス・コレクションの来歴や、「音と形」に関する研究成果、展示・活用事例などについて報告。最後に、本研究所の篠原聰准教授(ティーチングクオリフィケーションセンター)を司会に、発表者が各機関の連携や研究の展望についてディスカッションしました。

※当日のプログラムは下記のとおりです。

【開会挨拶】
松前記念館 水島久光館長(文化社会学部広報メディア学科教授)

【発表】
司会:文明研究所 吉田晃章准教授(文学部文明学科)

1.「笛吹きボトル制作ワークショップの展開―追体験から探る音色の認知―」 文明研究所 吉田晃章准教授(文学部文明学科)

2.「アーティゾン美術館所蔵ペルーの土器について」 アーティゾン美術館教育普及部学芸員 細矢 芳氏

3.「いけばな小原流 小原豊雲古代アンデスのコレクションについて」 京都学芸大学グローバル観光学科 南 博史氏

4.「東京大学総合研究博物館所蔵アンデス・コレクションの研究―笛吹きボトルを中心に―」 東京大学総合研究博物館 鶴見英成氏

5.「天理参考館所蔵笛吹ボトルの調査とメディアコンテンツの制作」 天理参考館 荒田 恵氏

7.「古代中南米の笛の歴史&伝統和陶器とのマリアージュ」 BIZEN中南米美術館 森下矢須之氏

8.「笛吹きボトルのモデルを使用した音響解析(経過報告)」 東海大学イメージング研究センター 粟野若枝技術員

【発表者8名によるディスカッション】 
司会:文明研究所 篠原 聰准教授(ティーチングクオリフィケーションセンター)