大学院健康科学研究科看護学専攻と本研究科FD委員会が合同で研究不正防止に関する特別講演会を開催しました。

大学院健康科学研究科看護学専攻と本研究科FD委員会が9月14日に、教員を対象とした研究不正防止に関する特別講演会をオンラインで開催しました。研究倫理に対する意識を高めるとともに、公正な研究活動の推進・指導を徹底するために実施したものです。早稲田大学先進理工学部化学・生命化学科教授の小出隆規氏が、「研究不正とその背景にあるもの―研究者・指導者として求められる姿勢とは―」をテーマに講演し、本研究科をはじめ医学部看護学科や健康学部健康マネジメント学科、医療技術短期大学の教員ら約50名が聴講しました。

小出氏は、実験データの捏造(Fabrication)、改ざん(Falsification)、他者の論文などの盗用(Plagiarism)という3つの研究不正(FFP)について、具体的な事例や不正に至った経緯を紹介。「研究不正は科学をむしばむ」と指摘し、不正を防ぐためには「不利なデータの隠蔽」「多重投稿」「不適切な共著者の記載」といった、FFPの前段階に存在する問題のある研究活動(Questionable research practice=QRP)からなくす必要があると力説しました。さらに、発表した論文数や論文の被引用数といった数値を基準とした研究者の評価法によって不正が誘発されることから、「研究評価に関するサンフランシスコ宣言(2012年)」「研究計量に関するライデン声明(2015年)」など、世界的に評価指標の見直しが進められていることも紹介しました。最後に、「今までは“よし”とされていた行為でも、今後は問題となる可能性があるという意識を持ち、まずはQRPに該当する行為をしないことから徹底してください」と語りました。

終了後には活発な質疑応答が交わされ、「学生の研究指導をする際に留意すべきこと」を問われた小出氏は、「学生が行った実験などの結果については、加工後のデータだけでなく生のデータを見るのが鉄則です。たとえ期待した結果が出ていなかったり、“失敗した”と落ち込んでいたりしても、その内容に興味を持ち、面白がることが大切。学生が委縮せず、前向きに研究に打ち込めるように、自らが研究を楽しむ姿勢を示すよう努めてください」とアドバイスしました。最後に井上専攻長が、「研究や教育に真摯に向き合う重要性をあらためて認識しました。教員も学生も誠実に研究に取り組み、新たな発見や成果をともに喜び合えるよう、本日の学びを生かしていきましょう」と結びました。