伊勢原養護学校伊志田分教室で粘土造形ワークショップを実施しました

東海大学教職資格センターでは10月25日から11月29日にかけて、神奈川県立伊勢原養護学校伊志田分教室の高等部3年次生を対象に、粘土造形ワークショップを実施しています。神奈川県と本学が展開する「ともいきアートサポート事業(創作×地域展示)」の取り組みとして、3回にわたって水粘土を使った作品を制作するものです。文化財修復家の堀江武史氏を講師に招き、本学からは同センターの篠原聰准教授と「博物館実習2(松前記念館実習)」を受講している学生が参加します。

ワークショップでは初めに、堀江氏が粘土造形の進め方を説明。「美術の授業では写し取る対象を用意し、視覚的にどこまで対象に似ているかが評価の基準ですが、今回の制作にはそのようなものはありません。決められたルールの中で、何を作るか考えずに自由に取り組んでみてください」と生徒たちに語りかけました。視覚ではなく、触覚に任せる作業だと氏は言います。1回目の授業は個人制作で、「十字形」という規範のもと生徒たちは粘土をこねて、それぞれが思い思いの十字形の作品を制作。2回目の授業では「台形の木枠の中だけで造形を行う」というルールで、台形の木枠に粘土を敷き詰めた作品のベースを制作し、粘土や道具を使って自由に造形しました。その後、いったん完成した作品を友達同士で交換し、作品から見えてくる印象(見立て)に従って手を加える共同制作を実施。黙々と取り組んだ生徒たちは、「友達の作風や意図を考えた上で手を加えるのは難しかった」「考えずに作り始めて、いつの間にか『町みたいなもの』が出来上がっていて、自分でも面白かった」と話していました。また、3回目の授業では、1・2回目で制作した作品に色を塗っていく予定です。

同校の教員からは、「普段行う美術の授業は準備・片付けを含めて45分間で、今回のように生徒が時間をかけて自分自身と向き合って個性を表現する機会は、とても貴重だと感じています。学生さんが自主性を尊重するために適度な距離を保ちつつ、優しくサポートしてくれたので、生徒たちは楽しそうに制作に取り組んでいました。また、制作過程では生徒たちで力を合わせて取り組む場面もあり、指導方法について私たち教員にとっても勉強になりました。コロナ禍でさまざまな行事が中止となってしまった高校3年生に卒業前の思い出になったと思います」といった声が聞かれました。

また、同事業を管轄する神奈川県の相場延弘さん(福祉子どもみらい局共生推進本部室共生グループ副主幹)は、「造形作家の方から直接指導を受けながら芸術作品を作り上げていく経験を得るとても貴重な機会となりました。今回は高校3年生が対象で、ともいきアートサポート事業でも初めての最高学年でした。どのように取り組んでもらえるか少し不安もありましたが、生徒たちが積極的に制作に取り組んでいる姿が印象的でした。このワークショップでの経験が生徒たちにとって、大きな財産として残ることを期待しています」と語りました。

児童をサポートした学生たちは、「年齢を重ねるごとに粘土を触る機会は減りますが、こうしたワークショップを実施することで、その時の自分を表現することができるので事業の重要性を感じました」「『考えない制作』と作品をトレードしてからの『考える見立て』は、私ならどうするだろうと思いながらサポートをしていました。人それぞれ道具の使い方や着眼点が違い、自由な表現を見ることができた」と話していました。

生徒たちが制作した作品は、来年3月1日から31日まで東海大学松前記念館(歴史と未来の博物館)で開催する展示会「水・呼吸・いのちのかたち 手の世界制作-2」で紹介します。