総合医学研究所がマイクロ・ナノ研究開発センターと共同で第17回研修会を開催しました

総合医学研究所が11月27日に伊勢原キャンパスで、「第17回研修会」を開催しました。この研修会は、研究成果の学内外への広報や若手研究者の育成、医科学分野に関連した他の学部や研究機関との連携を促進するため、毎年実施しているものです。昨年度に続きマイクロ・ナノ研究開発センター(MNTC)と共同開催し、両機関の研究者らが成果を発表。WEBビデオ会議システム「Zoom」を併用し、医学部、工学部、理学部の教員や学生、大学院生、生命科学統合支援センターの職員ら約100名が参加しました。 

医学部医学科の研究者で構成される総合医学研究所は、本学における医科学先端研究の中核拠点として、特に「ゲノム」「再生医療」「創薬」を重点領域に設定し、基礎・応用研究を一体化させたトランスレーショナルリサーチを推進しています。MNTCは、工学部や理学部、医学部、健康学部などの研究者らが、「マテリアル」「エンジニアリング」「メディカル」「ヘルスケア」「アート・サイエンス」の5つのチームを編成し、異分野の融合と連携を図りながら独創的な研究を進めており、両機関の研究者は多くの共同研究を展開しています。 

はじめに、本研究所の安藤潔所長(医学部医学科内科学系血液・腫瘍内科学教授)とMNTCの喜多理王所長(理学部物理学科教授)が、近年、細胞の生命活動において重要な役割を担う現象として注目されている「液‐液相分離現象」(溶液が、溶質を多く含む相と希薄な相の2相に分離する物理現象)をテーマに講演しました。安藤所長は、約70年前に物理学者によって生みだされた分子生物学の発展の経緯を紹介し、液‐液相分離現象が生命の原理を担っている可能性について解説。喜多所長は、液‐液相分離現象の理論や理工学系の研究者の従来の研究成果を解説し、細胞の研究に生かすための困難さやアプローチなどについて紹介しました。安藤所長は、「ようやくすべての生体高分子の構造が解明され、生物学は物理学とコラボレーションできるまでに成熟してきました。両分野の研究者が対話を重ね、双方のギャップを埋めていく先に、生命科学の発展があると考えています。マイクロ・ナノ研究開発センターとのコラボレーションは本研究所にとって千載一遇のチャンスです。大きなブレイクスルーが生まれることを期待し、さらに連携を深めていきたい」と語りました。 

続いて、両機関の研究者ら10名が最新の成果を報告し、活発な質疑応答や意見交換を展開。大学院生や若手研究者10名によるショートプレゼンテーションも行い、参加者の投票により優秀発表者3名を表彰しました(※)。 

当日のプログラムは以下のとおりです。 

【開会のあいさつ】 
安藤 潔(総合医学研究所長/医学部医学科内科学系血液・腫瘍内科学教授) 

【講演】 
安藤 潔 
喜多理王(マイクロ・ナノ研究開発センター(MNTC)所長/理学部物理学科教授)
「相分離現象序論」  

【研究発表】 
◇岡村陽介(MNTC/工学部応用化学科教授) 
「高分子ナノ薄膜ラッピング技術~バイオイメージング用アクセサリへの応用」

◇大塚正人(総合医学研究所/医学部医学科基礎医学系分子生命科学教授) 
「in vivo体細胞ゲノム編集評価系モデル動物の開発と応用」 

◇駒場大峰(総合医学研究所/医学部医学科内科学系腎・代謝内科学准教授) 
「骨組織Klothoが関与する新たなFGF23分泌調節機構の解明」 

◇荒井堅太(理学部化学科講師) 
「セレン化学を利用したタンパク質の立体構造制御」 

◇福田 篤(総合医学研究所/MNTC/医学部医学科基礎医学系分子生命科学特任講師) 
「女性多能性幹細胞におけるエピゲノム異常の回避」 

◇今井 仁(総合医学研究所/医学部医学科総合診療学系健康管理学助教)
「クローン病の新規治療法となりうる病原性共生菌を狙ったIgA抗体療法の開発」 

◇細川裕之(総合医学研究所/医学部医学科基礎医学系生体防御学講師) 
「転写因子ネットワークによるTリンパ球の運命決定メカニズム」

◇蟹江 治(MNTC/工学部生命化学科教授) 
「新規バイオセンシング技術創生を目指して:表面修飾シリカゲルによる分子認識」 

◇幸谷 愛(総合医学研究所/医学部医学科基盤診療学系先端医療科学教授)
「癌が脂質組成を変える理由~エクソソームを越えて~」  

◇樺山一哉(MNTC/大阪大学大学院理学研究科准教授) 
「難治性がん治療のためのα線核種標識抗体の創製および機能評価」 

【閉会のあいさつ】 
松阪泰二(総合医学研究所次長/医学部医学科基礎医学系生体構造機能学教授) 

※ショートプレゼンテーション・アワード受賞者 
1位:亀田和明(医学部医学科基盤診療学系先端医療科学)
「アグレッシブNK細胞白血病における肝臓微小環境の役割」
2位:松木勇樹(大学院医学研究科先端医科学専攻/マトリックス医学生物学センター) 
「取り込み効率および肝細胞指向性に優れたエクソソームの開発と新規DDSとしての臨床応用」
3位:三神瑠美(大学院理学研究科化学専攻修士課程) 
「ジペプチド接合型環状ジセレニド触媒を用いたタンパク質のS-ニトロソ化とミスフォールディングの抑制」