横浜市歴史博物館との連携事業を実施しました

ティーチングクオリフィケーションセンターでは令和3年度より、横浜市歴史博物館と連携して文化財資料保存活用事業に取り組んでいます。今年で3年目になる同事業の教育活用の一環として6月8日に、湘南キャンパスの松前記念館で本センターが開講する学芸員課程(指導教員=篠原聰准教授)の実践教育プログラムと特別講義を実施。学芸員を目指す学生たちが参加し、横浜市歴史博物館が管理する染色工芸家・芹澤銈介の関連資料を活用して資料の取り扱い方や学芸員の仕事などについて学びました。

実践教育プログラムでは、同博物館の吉井大門学芸員らの指導を受け、作品を直接取り扱い、状態点検調書の作成や保存処置に関する初歩的なメンテナンスを学びました。学生たちはまず、箱に収められた資料を丁寧に取り出し、寸法や保存状態を確認しながら作品の「カルテ」を作成。和紙に刷られた鮮やかな型染カレンダーを担当した学生は、1枚1枚慎重に手に取って作品が揃っているか、他の資料が混ざっていないかなどを検証していきました。また、数時間にわたり吉井学芸員らから作品の取り扱い方などの指導を受けた学生は、額装された『団扇絵』の古い補強テープを剥がして作品に影響しない新しいテープに付け替えるといった作業に挑戦しました。

団扇絵の作業に取り組んだ小池瑠栞さん(理学部4年次生)は、「貴重な芸術品に慎重に触れる経験は緊張しますが、化学系の実験で機器を操作する時にも役立つと思います」と話しました。加納里紗さん(文学部4年次生)は、「緊張しすぎてもしなさ過ぎてもだめだと感じました。心地よい緊張感を持ちながら素手で作品に触れられたことは貴重な経験で、資料に対峙することの楽しさを知りました」と実習を振り返りました。吉井学芸員は、「普段は展示されているような作品を実際に触れた経験は、これから皆さんがミュージアムにますます興味を持ってくれるきっかけになると思います」と語っています。

続いて1号館の教室で、吉井学芸員が講師を務めて「博物館展示の実際」をテーマに特別講義を実施し、学生ら40名が聴講しました。吉井学芸員は、横浜市歴史博物館の概要や、自身が手がけた特別展「横浜の仏像―しられざるみほとけたち」をモチーフに展示の企画から図録・チラシの作成、収益の見込みなど、展覧会運営の実際を解説。学生からは、狭き門とされる学芸員になるために努力すべきこと、展覧会の企画を立てるための人脈のつくり方、最も大変だった展示などについての質問が上がり、講義終了後も熱心に話し込む姿が見られました。指導する篠原准教授は、「芸術作品に触れたり、学芸員から直接話を聞いたりすることで、学生たちは大きく成長します。学芸員には作品や資料の取り扱いに関する技術やスキルだけでなく、コミュニケーション能力やマネジメント能力も求められます。こうした経験は将来、学芸員のみならず企業に就職する際にも必ず役立つと思います」と話しています。