ジャーナリズム実践教育特定プログラムの学生が福島県で取材しました

チャ レンジセンター科目「ジャーナリズム実践教育特定プログラム」の学生3名と岩田伊津樹教授が、昨年度から続けている定点取材の一環として9月5日と6日、 福島県岩瀬郡鏡石町の農家において取材・農作業体験を実施しました。東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染や風評被害で苦闘する福島県の農 業を継続的に見て考えてゆこうというもので今回3回目です。

定点取材の対象となっていただいているのは、同県のほぼ中央に位置する郡山市 から南に車で約30分の兼業農家・栁沼一良さんのお宅です。第一原発から約60キロの地点にある鏡石町は、果樹栽培が盛んな農村地帯にあり、栁沼家も稲作 の他、桃とリンゴを作っています。昨年春に東海大学を卒業(文学部広報メディア学科)、日本農業新聞の記者として農水省を担当している志帆さんのご実家で す。原発から南西方向に位置する関係から、同町は放射線量が高くないにもかかわらず、風評被害を受けています。

今回は、今年3月に訪問し た後の農業の状況について、日々農作業を中心となって行っている一良さんの妻の千津子さんからお話をうかがいました。昨年夏は、リンゴの木が枯れるほどの 干ばつだったのですが、今年は順調に育っているとのことでした。しかし、原発事故の影響は深刻で、農業収入の中核になっている米は、今年も全袋検査を実施 することになっています。袋詰めの後、農協の検査場まで軽トラックで何度も往復しなければならず重労働だといいます。それでも袋の外から放射線量を計測で きる米はまだ良い方で、野菜や果実類は種類ごとに1キロずつ砕いて持って行かねばならず、オクラなど軽いものは量が多くなり採算が取れないため出荷を断念 したそうです。そのうえ収入の上がる直販の注文は、事故後ぱったりとなくなってしまいました。米などは約3割も安く売らねばならない状況だといいます。

さ らにキュウリ、イチゴ、梨を栽培している近隣の農家を紹介していただき取材しました。繁忙期の峠を越した時期でしたが、どのお宅も風評被害に悩んでいる様 子でした。中には町内の仲の良い知人に収穫したばかりの果実を持って行ったところ、「福島の物は食べない」と突き返されてショックを受けたという方もいま した。経済的な損害だけでなく、地域の人間関係にも微妙な亀裂が生じていることがうかがえました。

最後にほんのわずかな時間でしたが、栁 沼果樹園でリンゴの葉っぱ取りの作業を体験させてもらいました。早生種のリンゴは、間もなく収穫の時期を迎えます。大きく実ったリンゴには、上部を覆うよ うに葉がかぶさっています。このままだと日差しがよく当たらず、赤くならないためひとつひとつ葉を取り除きます。果樹園のリンゴの木は300本。1人でや るとなると気の遠くなるような作業です。

この定点取材に最初から参加している高橋紗祐理さん(文学部広報メディア学科4年次生)は「来る 度に少しずつ話が聞けるようになってきた気がします。福島の人たちと話すたびに、このままでいいのかという思いが強くなってきました」と話しています。福 島定点取材は、今後も続ける予定です。