東海大学学生ロケットプロジェクトが、音速をこえて飛翔するロケットの開発に取り組んでいます

東海大学チャレンジセンター・東海大学学生ロケットプロジェクトが、8月18日から25日まで開催された「第12回能代宇宙イベント」(秋田県能代市)に出場し、24日に同市内の落合浜海水浴場跡地でハイブリッドロケット42号機(TSRP-H-42)の打ち上げ実験を行いました。独自のロケット開発に取り組む本プロジェクトは、長期目標として”宇宙空間へと到達するロケットの製作”を掲げています。現在はそのために必要な技術の基礎を築くべく、”最高到達点10km”を目指して日々活動しています。高度をより伸ばすためには音速をこえて飛ぶことが不可欠ですが、日本の学生ロケットでこの速度に達した機体はなく、設計するためのデータや資料はありません。そこで、今回は”音速(※1)をこえたときにロケットにどのような影響が出るのかを調査する”ことを目的として打ち上げ実験に臨みました。

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今回の打ち上げに向けてプロジェクトメンバーは、1月から準備を開始しました。音速をこえるためには、非常に強力なロケットエンジンを搭載するか、機体を軽量化する必要があります。本プロジェクトの所有する最大出力のエンジンを使っても音速には届かないことから、機体の大部分で使われていたガラス強化繊維プラスチックをカーボン強化繊維プラスチックへと変更。さらに、各パーツを小型化し、これまでよりも細い機体を製作することで軽量化に成功しました。8月9日と13日には、湘南キャンパスで発射台の設営や当日の役割分担を入念にリハーサルし、当日を迎えました。

本来の打ち上げ予定日は23日でしたが、台風接近の影響を受けて翌日24日に順延。打ち上げでは、発射台から日本海上空へ順調に打ちあがったものの、空中で機体先端のノーズコーン(※1)が大きな抵抗に耐えることができずに分裂。最終的には3つに分かれた機体が海上に落下し、詳細なデータを得ることができませんでした。

プロジェクトメンバーの岸里大輝さん(工学部航空宇宙学科4年次生)は、「念入りに準備をしてきただけに悔しさが残ります。それでも打ち上げ時の映像を見ると、音速をこえたときに聞こえる特有の”ボンッ”という音(※2)が確認できました。実データを得られなかったので、正確な判断はできませんが、手ごたえを感じています。機体を製作してきたときも、失敗に失敗を重ねて着実に進んできたので、今回の打ち上げも必ず糧になります」と話し、広報リーダーの谷口友(とも)望(み)さん(同3年次生)は、「さまざまな先輩方が蓄積してきたデータがあるからこそ、私たちは音速に挑戦できます。しっかりと成果を残せるようこれからも活動していきたい」と語りました。

また、同大会にて行われた出場チームのTシャツのデザインを競う「Tシャツコンテスト」において、最優秀賞を受賞。記念品として大会公式マスコットキャラクター「のしろケットちゃん」の像が本プロジェクトに授与されました。

※1音速:音の速度のこと。時速約1,200km、秒速約340mが音速とされている

※2ノーズコーン:曲線を描いたロケットの先端にある部分のこと

※3音速をこえる際の音:物体が音速をこえると、後から音同士が重なって衝撃波(ソニックブーム)となり大きな音が発生する(なお、今回の実験では断定できず)

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