「2022年度東海大学情報技術センター研究報告会」を開催しました

情報技術センター(TRIC)が2月24日に、高輪校舎で「2022年度東海大学情報技術センター研究報告会」を開催しました。この報告会は、TRICおよび協力関係にある各機関との共同研究の過去1年間の成果を広く社会に発信する目的で毎年開催しているものです。オンラインでも配信された当日は、教員や研究者ら約90名が参加しました。

当日は、はじめに本学の山田清志学長から寄せられたビデオメッセージが上映され、「長きにわたって先進技術を牽引してきたTRICの研究員や外部の方をお招きして、2022年度の研究成果を報告できることをうれしく思います。研究成果を共有し、新たな研究に発展・活用されることを期待しています」と話しました。その後は、荒木朋洋学長補佐(総合農学研究所教授)によるあいさつとともに、TRICの長幸平所長が開催を宣言しました。続く、報告会では、NASAゴダード宇宙センター雪氷部門の名誉上級研究員のジョゼフィーノ・コミソ博士が「State of the Sea Ice Cover from Space/宇宙から見た海氷域の様子」と題して特別講演。衛星に搭載されたマイクロ波放射計での1978年から2022年まで計測したデータをもとに北極域の海氷が減少している現状を紹介。「海氷域の多年氷域が覆っている面積の減少率は、1990年代までは10 年あたり11.2%から12.4%でしたが、1998年以降は16.3%から17.1%に加速しています。このままだと今世紀中に夏季の北極海が青い海になる可能性も考えられます」と語りました。さらに、南極の海氷面積が2015年から2017年にかけて急激に減少したことなどについて解説し、「今後は海氷の範囲と表演温度の相関関係以外の要因も調べていく必要がある」と提言しました。

その後は、TRICの研究者のほか、宇宙航空研究開発機構JAXAやキヤノン電子株式会社(CE社)などの研究者らが、視点移動によるVR酔いや災害時に画像共有を行うサイトの開発など9つのテーマで報告を実施。「AMSR2海氷密接度推定精度の向上に関する研究」をテーマに講演した長所長は、JAXAの地球観測衛星GCOM-Wに搭載されたマイクロ波放射計AMSR2と同期観測した光学センサMODISのデータからAMSR2海氷密接度の推定精度を評価した研究結果を発表。また、新たに開発したWeather Filterが疑似海域の低減に成功したことによりJAXAプロダクトの処理に組み込まれることが決定したことを報告しました。

今年度で所長職を退任する長所長は、「これまでTRICはリモートセンシングに関する研究を行う機関として広く知られてきましたが、最近は多種多様な分野を扱う研究者が加わり、多彩な研究を展開しています。また、様々な研究機関との連携も深まっており、今年度の報告会では進化するTRICを実感して頂けたのではないでしょうか。近年は農学部との共同研究で、IT農業にも力を入れています。今後もTRICが情報に関する先端的な研究を担う機関としての役割を果たしていってくれることを期待しています。」と期待を語っていました。

なお、研究テーマと講演者は以下のとおりです。

【特別講演】
「State of the Sea Ice Cover as Observed from Space」 ジョゼフィーノ・コミソ氏(NASA名誉シニア研究員)

【活動報告】
「AMSR2海氷密接度推定精度の向上に関する研究」 長幸平(TRIC所長)、直木和弘(TRIC技術員)
「CE-SATシリーズによる地球・宇宙観測」 丹羽佳人(キヤノン電子 衛星事業推進部長)
「HMDによるVR体験時の視点移動とVR酔いの関係」 濱本和彦(大学院情報通信学研究科長)
「角膜イメージングを用いた視線計測技術」 竹村憲太郎(情報理工学部教授、TRIC研究員)
「雲エアロゾル放射ミッション『EarthCARE』で目指すサイエンス」 久保田拓志(JAXA/EORC 研究領域主幹)
「災害画像共有サイト LISA(Local Image ShAring)の開発」 内田理(情報理工学部教授、TRIC研究員)、長幸平(TRIC所長)
「中山間地域における放牧牛の遠隔管理システムの構築」 樫村敦(農学部准教授)、大庭康彦(東海大学宇宙情報センター 技術員)
「衛星データとスマート水産業」 斎藤克弥(漁業情報サービスセンター システム企画部長)
「近年における捜査機関への防犯・監視ビデオ鮮明化処理技術移転」 佐藤康党(TRIC技術員)・鶴岡裕也(警視庁研修生)