建築都市学部オープニングセミナー「『こもれび』の透過性を生み出す幾何学と力学」を開催しました

東海大学では11月20日にオンラインで、建築都市学部オープニングセミナー「『こもれび』の透過性を生み出す幾何学と力学」を開催しました。2022年度に開設する建築都市学部の理念や教育・研究活動を周知するとともに、建築にまつわる企業や行政、大学などの研究機関の識者らとそのあり方を考える機会とすることを目的としたものです。「Linkage 人・建築・都市を○○でつなぐ」を共通テーマとして今年度から23年度まで合計9回の講演を企画しており、第2回となる今回は佐藤淳構造設計事務所技術顧問で、東京大学准教授、スタンフォード大学客員教授を務める佐藤淳氏が講師を務めました。

構造家として活躍する佐藤氏は、近年の作品に「Vijversburg Visitor Center」や「Sunny Hills in Aoyama」「新白島駅」「直島パビリオン」「高田東中学校」「宮野森小学校」などがあります。2009年には地域資源活用総合交流促進施設で日本構造デザイン賞を受賞したほか、21 年ヴェネチアビエンナーレで金獅子賞を受賞した「UAE パビリオン」にも協力。海外からの評価も高く、アメリカや西欧、北欧の大学との研究活動やインスタレーション、ワークショップのコラボレーションの実績も多数あります。また、建築家で東京大学大学院教授の岡部明子氏とエクアドルやアルゼンチンの支援活動なども行っており、国内の活動のみならず海外での災害復興支援にも力を入れています。

講演では、まず「か細い材で形成された透過性のある構造形態は環境を制御する『フィルター』としての役割があり、『こもれび』のようなナチュラルな空間を生み出します。そのために、力学と光環境を同時に最適化する『多目的最適化』によって建築物の形態を生み出す時代が訪れています」と語り、『こもれび』や『さざなみ』『せせらぎ』といった言葉を連想させる構造形態を生み出すために、力学形態や幾何学形態を制御し、ワークショップスケールでの実践を通じて形態生成の「設計法」構築を目指す活動について紹介。曲面のガラス壁で構造したオランダ「Park Groot Vijversburg」や、12㎜の鋼板を使って80m×50mの懸垂屋根を作った神奈川工科大学の「KAIT広場」、建築家・隈研吾氏とともに取り組んだ山並みのような多面体を持つ「川棚温泉交流センター」などを例に挙げながら、最適化アルゴリズムを用いた形態解析の自動化や「Deep Learning」の活用について解説しました。さらに、幾何学を用いて自由形状を実現させた取り組みとして、隈研吾氏とともに日本の伝統的な「木組」の技術を応用して細かな材を複雑に組んだ「Sunny Hills in Aoyama」における「地獄組み」「千鳥格子」の応用や、構造物の画像を処理して「ゆらぎ」の成分を解析する「2次元スペクトル解析」、建築材のCNC加工など多角的に取り組んでいる様子について紹介し、「このような手法の研究、実践を通じて『ナチュラル』な空間を追求することが、災害などでその建築物が壊れてしまった際でも、“中にいる人が死なない構造”の追及につながります」と語りました。

続いて、建築都市学部学部長就任予定の岩崎克也教授(工学部建築学科)の進行で質疑応答も実施。「多くの建築家とコラボレーションする中で、どのような手法で建築物の形態をつくっていくのでしょうか?」「建築と構造の関係性は今後変化していくのでしょうか?」といった質問が寄せられ、佐藤氏が一つひとつ丁寧に回答しました。また、最後に佐藤氏から学生に向けて、「数学や物理学の数式やプログラミングは難解ですが、恐れることなくぜひ取り組んでください。数式を扱えると形状や構造デザインが生み出せるようになります。世の中には数多の構造デザインが生み出されていますが、私自身もまだまだやりたいアイデアは尽きません。皆さんも“やりつくされた”とは思わず、チャレンジしてください」とメッセージが送られました。

なお、次回は2022年2月26日(土)17時から、アラップ・アソシエイトの荻原廣高氏(神戸芸術工科大学准教授、東京藝術大学非常勤講師、芝浦工業大学非常勤講師)を講師に招き、「光を操り、風を促す環境デザイン・エンジニアリング」をテーマに実施する予定です。