【湘南キャンパス】工学部を再編し建築都市学部も新設

工学部

学科専攻の”大くくり化”で
 人間力を磨く環境をつくる

東海大学が建学80周年にあたる2022年に予定している全学的な改組改編計画「日本まるごと学び改革実行プロジェクト」では、シナジー効果を引き出すことを目的に工学部の学科編成が再構成され、現行の13学科2専攻から集約型の7学科2専攻となる。新しい「工学部」の展望を大山龍一郎学部長らに聞いた。工学部・大山学部長525right.jpg

「工学によって人々の生活を守り(倫理)、人類社会が持続・発展できる社会を実現すること(規範)」を理念として掲げる工学部。大山学部長は、「学園の創立者・松前重義博士は生涯を通して思想と技術を兼ね備えた人を育てることの重要性を訴え、思想を欠いた技術の暴走に警鐘を鳴らし続けました。その考えこそ、本学部が変えてはならない重要な理念です」と語る。
今回の改組改編では、この理念を軸に、グローバル化など工学分野を取り巻く環境の変化への対応が図られる。学科編成は細分化された13学科2専攻から7学科2専攻に”大くくり化”。「背景には工学分野の学際化が進んでいることやこれからの未来を創造するために『一つの専門技術に精通しているだけでなく、さまざまな技術を自在に組み合わせて活用できる人材が必要』という考えがあります」と大山学部長。
カリキュラムでも、産業界の変化やニーズをもとにした8単位程度の科目群がパッケージ化されたコース制が導入され、学生は興味や志向に応じた履修モデルを自ら組み立てることになる。また、工学分野に欠かせない「IT(情報技術)をツールとして活用するアプローチ」と、さまざまな専門知識を組み合わせて活用する力を磨く「ものづくりを継承する学術のアプローチ」が取り入れられる。パッケージの内容は定期的に見直され、常に社会や学生のニーズに沿った教育が展開される計画だ。

問題解決力や価値創造力で
 社会の変化に対応する

機械系の学科では機械デザインや材料を扱う「機械工学科」と、ロボティクスやモビリティが専門の「機械システム工学科」に再編される。現行の機械工学科で教鞭をとる甲斐義弘教授は、「新しい機械システム工学科では、これからの社会を支えるメカトロニクス技術者の養成を目指し、アクティブラーニングなどの実践型教育を通して自ら問題解決できる人材を育てたい」と話す。
情報システムや電気電子システムを学ぶ電気電子工学科の村野公俊教授は、「将来はIoT機器から集まったビッグデータがAIで処理される時代になる。電気やエネルギー、エレクトロニクス、通信技術にとどまらず、データサイエンスやAIを総合的に学べる環境を整えます。学部と大学院の一貫教育を視野に入れ、ハードとソフトを自在に組み合わせ、新しい価値を生み出せる人材を育てたい」と語る。

さらに学部全体の学びのキャリアパスも明示。1年で工学の基礎を学び、興味・関心を明確にし、2、3年では自身の適性と志向を伸ばす。4年でさらに専門に特化した分野に取り組むことになる。大山学部長は、「既存の教育課程では大学入学前に自らの専門を明確にしなければなりませんでしたが、大学での学びを経験したうえで専門領域を選択できるようにします。その中で人間力を磨き、社会で活躍できる力を養ってもらいたい」と展望を語っている。


建築都市学部

建築と土木の融合図り
 文系学生にも門戸を開く

現在の工学部から建築学科と土木工学科を独立させる形で新設される建築都市学部(申請予定)。東海大学建学の理念に沿い、文理融合を進めた新しい入試制度やカリキュラム編成も計画されている。改組改編に向けて準備を進める建築学科の小沢朝江教授と渡部憲教授、土木工学科の梶田佳孝教授が語り合った。

従来の工学部建築学科、土木工学科では入試科目の制約上、受験できるのは理工系を志望する学生に限られていたが、新学部では文系を志向する学生にも門戸が開かれる計画となっている。また、カリキュラムでも建築の構造や材料、設備などを学ぶ「建築工学」と建築計画や歴史意匠、意匠設計などを学ぶ「建築計画」の科目群に加え、”地域への視線”を具現化する分野として「地域デザイン」も取り入れられる。
小沢教授は、「建築学はコンクリートなどの材料や構造解析工学的な領域だけでなく、歴史や経済、社会システムなど人文社会的な要素も含む幅広い学問であり、『人の生活に寄り添う総合工学』ともいわれます。専門分野として担う役割も多く、ソフトとハードの両面から社会的な課題を解決できる『柔らかな技術者』が求められている」と語る。
学部名に「都市」を含んだ狙いについては、「都市には『人や建物の社会的集合体』という意味を込めています。湘南地域を中心にコミュニティーの中核を担ってきた本学の特徴を生かし、地域らしさの創出や経済の活性化、きめ細かな防災計画などの課題に対して、自ら調査・発見し、地域と協働して解決できる人材を育成したい」と話す。

建築都市鼎談525.jpg

地域との協働を促進
 学際研究も積極的に展開

渡部教授は「建築学に対する社会ニーズとリンクさせて能力を伸ばし、高い市民性を備えて指導的な立場で活躍できる人材の養成が目標」と語る。
土木工学科の梶田教授は、「本学科でも防災や地域活性化などで地域と密接に連携してきました。その資産を生かしたい。これまでは技術系、ハード中心の教育で企業への就職率もほぼ100%を維持してきましたが、今後は防災や環境をキーワードにまちづくりといったソフト系の科目も充実させていく」という。
さらに、両学科では教育・研究の両面で学生交流の活発化や他学部他学科との連携強化も視野に入れる。小沢教授は、「学際研究を積極的に展開し、その成果を地域に還元することで『QOLの向上』や持続可能な社会の実現に寄与したい」と意気込む。
「建築学は文系・理系の枠にとらわれず誰もが活躍できる学問。少しでも興味があればぜひこの学部を志してもらいたい」と渡部教授。梶田教授は、「土木工学は”工事現場”のイメージがあるかもしれませんが、防災やまちづくりの要であり、一般的な印象とは異なります。多くの学生たちと次世代の社会をともにつくっていきたい」と期待を語っている。2022KOUGAKUBUkaisoan.jpg※画像をクリックすると拡大表示されます。