NASAのコミソ博士らを迎えワークショップを行いました

東海大学情報技術センターでは4月25日に、NASAゴダード宇宙センターの上級研究員ジョセフィーノ・コミソ博士らを迎え、「マイクロ波放射計による高精度な地球環境・気候変動監視」をテーマとしたワークショップを代々木キャンパスで開催しました。マイクロ波放射計による海氷観測の第一人者であるコミソ博士をはじめ、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や気象庁、在日米国大使館、国立極地研究所、東京大学などから地球観測の専門家らを招き、学生や教職員、研究者ら約80名が出席しました。

当日はまず、情報技術センターの長幸平所長代理が、「コミソ博士とは3月15日から4月末まで湘南キャンパスで共同研究をしています。この貴重な機会にマイクロ波放射計による地球観測の重要性を再確認しようとワークショップを企画しました。急なお話にもかかわらず多くの方々にお集まりいただき、非常にありがたく思っております」とあいさつ。続いて、アメリカ大使館のクリストファー・ブラッカビー氏が「現在、日本の地球観測衛星『しずく』に搭載されている高性能マイクロ波放射計『AMSR2』は国際的に高い評価を得ていますが、その後継機の開発はまだ決まっていません。バラク・オバマ大統領も、キャロライン・ケネディ大使も日本政府への期待を表明しています。このワークショップが、開発着手の機運を高める一助となることを切に願います」と語りました。

その後、9件の研究報告があり、コミソ博士は「極域における気候変動の兆候」と題し、長年蓄積してきた雪氷圏の衛星観測データから、温暖化の影響が北極域の海氷分布の減少傾向に顕著に表れている状況を詳細に指摘しました。また、長所長代理は「海氷観測におけるAMSR2の先進性」について報告し、「日本のAMSR2は世界最高性能のマイクロ波放射計です。こうしたセンサで高精度な長期観測を実現するためには、AMSR2の寿命が尽きる前に、後継機を打ち上げる必要があります」と訴えました。

ワークショップの後半には本学の坂田俊文名誉教授、東京大学大学院工学系研究科の中須賀真一教授、一般財団法人リモート・センシング技術センターの福田徹氏をパネラーに総合討論が行われ、熱の入った議論が展開されました。

発表者とテーマは以下の通りです。

◇クリストファー・ブラッカビー氏(駐日米国大使館、アメリカ航空宇宙局『NASA』)
「マイクロ波放射計の国際的な重要性」
◇ジョセフィーノ・コミソ博士(アメリカ航空宇宙局『NASA』)
「極域における気候変動の兆候」
◇可知美佐子氏(宇宙航空研究開発機構『JAXA』)
「高性能マイクロ波放射計による全球観測~AMSR-EとAMSR2がもたらしたもの~」
◇下田陽久客員教授(東海大学情報技術センター)
「世界の地球観測衛星開発計画におけるマイクロ波放射計の位置付け」
◇長幸平所長代理(東海大学情報技術センター、情報理工学部長)
「海氷観測におけるAMSR2の先進性」
◇矢吹裕伯氏(国立極地研究所)
「北極域データアーカイブによるAMSR2データの利用推進」
◇斎藤克弥氏(一般社団法人漁業情報サービスセンター『JAFIC』)
「マイクロ波放射計データの水産への応用」
◇計盛正博氏(気象庁)
「数値予報でのAMSR2データ利用」
◇竹内渉准教授(東京大学生産技術研究所)
「マイクロ波放射計による洪水監視」
◇吉村善範氏(宇宙航空研究開発機構『JAXA』)
「JAXAの地球観測衛星計画」

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