ミニシンポジウム「食、海洋と化学的研究」を開催しました

東海大学創造科学技術研究機構では11月17日に清水キャンパスにおいて、ミニシンポジウム「食、海洋と化学的研究」を開催しました。食物や海洋資源より得られる化学物質は、生活に直結し、生命の進化や成り立ちに深く関わっています。それら「物質」を中心に、化学的な手法を駆使したさまざまな謎の解明や新技術の開発に関して、最新の研究を報告・共有しました。当日は多くの教員や学生、市民らが参加しました。

開会にあたり、本機構の長幸平機構長(情報理工学部教授)があいさつに立ち、機構の役割や本シンポジウム開催の重要性について語りました。招待講演では、はじめに北海道大学大学院先端生命科学研究院助教の谷口透氏が登壇し、「分光スペクトルの高度な利用で生理活性物質の構造に迫る」をテーマに講演しました。谷口氏は、分子の機能(匂い、味、酵素阻害活性、反応性など)はその構造によって大きく影響されるものであり、分子を扱う研究では、その構造を明らかにすることが必要不可欠であると解説。分子の構造を明らかにする「分光法」は数が限られている中で、谷口氏は自ら発展させてきたVCD(振動円偏光二色性分光法)による新たな方法論の概要と応用研究について紹介しました。

続いて、東海大学創造科学技術研究機構の浅川倫宏准教授が、「食品成分のケミカルバイオロジー研究」をテーマに、化学的大量合成を基盤としたノビレチンの最近の研究展開について紹介しました。柑橘類果皮に含まれるノビレチンの「真に実践的」な合成方法の開発に成功し、より詳細で実用性を高める研究に必要な供給問題を解決した研究成果を解説したほか、ケミカルバイオロジーツールへの展開も合わせて、化学と食、健康を紡ぐ研究内容を紹介しました。

最後に、静岡県立大学食品栄養科学部准教授の伊藤創平氏が、「機械学習とHIで切り開く人工蛋白質設計技術」と題して講演しました。伊藤氏の研究室では、膨大な遺伝子配列のデータベースを、機械学習と経験則を融合させた新規手法により解析しており、有用な遺伝子を高精度にスクリーニングする技術と、目的に合わせて変異をデザインし、遺伝子を高機能化する技術の構築に成功。これまでの研究経緯や新技術の開発を想定した展開方法などについて語りました。講演後は来場者から質問が寄せられ、積極的に意見交換する場面も見られました。