研究セミナー「日本とASEAN:経済とエネルギーの展望」を開催しました

東海大学創造科学技術研究機構では1月28日に湘南キャンパスで、「日本とASEAN:経済とエネルギーの展望」と題したセミナーを開催しました。本機構卓越研究員のタギザーデ・ヘサーリ・ファルハード講師が企画したものです。2019年に日本とASEANの友好協力が45周年を迎えるなどASEAN諸国が日本の貿易相手として重要性を増している一方、中国が「一帯一路」構想(BRI)を展開し、ASEAN諸国へのインフラ、エネルギー投資を強化している現状を踏まえ、日本・ASEAN諸国・中国における経済やエネルギーについての展望を共有することが目的とし、海外から2名の研究者を招聘、学内外の教職員ら17名が参加しました。

開催にあたって、タギザーデ講師が趣旨を説明。「日本とASEAN諸国の協力関係は、過去数十年間における東南アジア経済の経済的繁栄に貢献してきた一方で、日本は産業移転の目的地としてASEAN経済を利用してきた面もあります。そうした活動は、ASEAN諸国の安価な人件費と土地を利用して、製造コストを最小化することが目的でした。加えて、若年層が多く、中間所得層が増加しているASEAN経済圏は、日本製品の輸出先でもあります。このセミナーでは、環境に優しい新エネルギーである『水素』に焦点を当て、政治経済とエネルギーの面において、近年の日本とASEANの経済関係の進展と中国の一帯一路時代を展望したいと思います」と語りました。

はじめに、タイ・チェンマイ大学経済学部准教授・ASEAN研究センター所長のニシット・パンサミット氏が講演し、「ASEAN諸国では、日本のブランド品が人気を博しているが、中国製品との比較では、その日本製品の競争力は徐々に低下している」と指摘。今後も競争力を維持するために、高い技術力を持つ日本の中小企業(SME)がASEAN諸国に進出し、現地の中小企業との合弁企業を設立することなどが有効であると提案しました。また、「BRIが大規模プロジェクトに重点を置いているため、中小企業はBRIが対象としていないセクター。日本の学生がASEANの文化と市場をよく理解し、相互理解を深められるよう学術外交を展開することも重要」と強調しました。

次に、中国・湖南工科大学経済学部准教授・東アジア・アセアン経済研究センター(在インドネシア)および東アジア経済研究所研究員であるヤンフェイ・リー氏が登壇しました。リー氏は、日本とASEAN諸国の水素エネルギー利用に焦点を当て、再生可能エネルギーの経済性と環境への影響について説明。また、水素の燃料源としての可能性について、タギザーデ講師との共同研究の結果を発表し、「水素の価格は現在1kgあたり7~8ドルと高価だが、現在進んでいるコスト低減の傾向を考慮すれば、2030年までには物流に利用する燃料として活用できるようになる。炭素加算や炭素税などが各国で導入されればこの期間も短くなります」と説明しました。さらに「日・中・ASEAN諸国間におけるグリーンおよび知識エネルギースキームが設立されれば、地域の平和、結束の促進にもつながる。日本には高レベルの水素技術があり、中国企業は水素プロジェクトへの投資に高い関心を持っている。ASEAN諸国は日本、中国と共同で水素開発の確立のための市場を提供できる」と解説しました。

日本・ASEANセミナー (1)1100.jpg

日本・ASEANセミナー (2)525.jpg

日本・ASEANセミナー (3)525.jpg

日本・ASEANセミナー (4)525.jpg

日本・ASEANセミナー (5)525.jpg