湘南校舎でイランの大学院生を対象にした短期研修プログラムを実施しました

東海大学では12月17日に、湘南校舎1号館のGlobal AGORAで、外交を学ぶイランの大学院生を対象にした短期研修プログラムを実施しました。笹川平和財団中東イスラム事業グループが実施している「日本・イラン青年交流事業」の一環で、本学では毎年笹川平和財団より本研修の実施を受託しています。新型コロナウイルスの感染拡大によって2020年度は中止、21年度はオンラインでの実施となっていましたが、今回は3年ぶりに対面開催となりました。「環境が激変する世界での安全保障に対する考え方」をテーマに、3名の教員が特別講義を実施。イラン外務省付属の大学院「イラン国際関係学院(SIR)」で学び、卒業後は外交官候補生として期待される9名の学生と引率の教員1名が参加しました。

はじめに政治経済学部の小川裕子教授が、「21世紀の日本の安全保障、経済、ODT」と題して講義。シルククロードでの交易をはじめとする日本とイランの友好関係の歴史や日本が世界のGDP(Gross Domestic Product/国内総生産)3位になるまでの取り組みを解説するとともに、本学卒業生でイラン出身の俳優のサヘル・ローズ氏と自身のかかわりやヨルダンの難民キャンプ訪問をはじめとするサヘル氏の慈善活動を紹介しました。また、女性として初めて国連難民高等弁務官を務めた緒方貞子氏の活動やODA(政府開発援助)の仕組みについても解説しました。講義後には、大学院政治学研究科の大学院生2名が「芸術の政府統治」「中国と日米同盟」をテーマにした研究発表も行いました。次に、本学の内田裕久特別栄誉教授が「水素とアンモニアによる日本のエネルギー政策」をテーマに講演。2011年に発生した東日本大震災の被害規模や東京電力福島第一原子力発電所の事故について説明し、「この事故が警鐘となって日本国内におけるエネルギー政策が変化し、再生可能エネルギーへの関心が高まっていきました」と話しました。さらに、世界各国のエネルギー自給率やコストなどを解説するとともに、カーボンニュートラル社会の実現に向けて近年注目が集まる水素・アンモニアを利用した発電やその活用例を紹介。また、水素とチタンなどの金属を混ぜた「水素吸蔵合金」や、農業や魚の養殖への利用など自身の研究も紹介しました。

続いて、吉川直人副学長(国際担当)が「新型コロナウイルスの流行、食料安全保障とウクライナでの戦争」と題して講演。食料安全保障の定義や近年の世界の栄養不足調査結果を紹介し、「コロナ禍の収入減少や輸出費などが高騰したことで、栄養不足者は年々増加しています。また、ロシアによるウクライナ侵攻によって穀物と石油の価格が急騰するなど価格に大きな影響が出ました」と語り、世界の穀物や小麦市場の価格変動を紹介しました。また、イランの食料安全保障についても解説し、「ウクライナ侵攻が終結するとともに、世界が手を取り合って食料入手に関する懸念を解消していくことで、世界の食料安全保障を確立できると考えます」とまとめました。講演後には、本研修の修了証の授与式を行い、吉川副学長が一人ひとりに手渡しました。