
2025年3月に、3週間ほど南フランスの中世ロマネスク教会建築(11~12世紀)の実地調査を行いました。
そしていつもは中に入ることのできない教会の中をいくつか見ることができました。

その中のひとつ、ドローム県・シャブリアンのサン=ピエール教会は、長いこと修復作業のために閉鎖されていましたが、最近その作業も終わり今回は中に入れました。身廊は12世紀、その奥の内陣と後陣はそれよりも古い11世紀のものです。
内陣と後陣にはロマネスクのかわいい柱頭彫刻が集中的に残されています。
サン=マルセル=レ=ソゼのサン=マルセル教会は、これもまたいつもは非公開で閉まっているのですが、村役場と交渉し、教区の教会管理者の方に開けてもらいました。この教会には、特徴的なアーチに囲まれたトランセプト交差部、身廊のピア柱、後陣半ドームに残されたフレスコ画などがあります。また床下から発掘された初期キリスト教時代の石の祭壇を見ることができました。四隅に円柱が配され、中央の面にはキリストを表す円形のクリスムが彫刻されています。この祭壇は6~8世紀頃の非常に貴重なもので、この地に古くから聖なる祈りの場があったことを示しています。
なお、教会を開けてくれたこの教会管理者の方からは、いろいろな資料をいただいただけではなく、なんと自宅に招いてランチまでご馳走になりました。定年で引退した後は料理が趣味となったそうで、彼の手作りのランチは非常においしかったです!
ヨーロッパ・アメリカ学科教授 中川久嗣