丸山准教授の訳書が出版されました

ヨーロッパ・アメリカ学科の丸山雄生准教授が共訳した本が刊行されました。

P・E・モスコウィッツ著、丸山雄生・宮田伊知郎訳『都市殺し ジェントリフィケーション・不平等・抵抗』(明石書店, 2025年).

近年、世界的に進む「ジェントリフィケーション」について、アメリカの4都市(ニューオーリンズ、デトロイト、サンフランシスコ、ニューヨーク)をジャーナリストが取材した本です。ジェントリフィケーションとは、都市が再開発されて、きれいで、おしゃれで、華やかな場所に生まれ変わることです。アメリカだけでなく、日本でも、世界各地でも、寂れていた地域や工業地帯、港湾・鉄道施設跡などが再開発され、新たに高層マンションやショッピングモール、公園、スポーツスタジアムやホールなどの複合施設が建設されてにぎわうようになった場所が多数あります。

「廃墟だったデトロイトのミシガン中央駅(2007年撮影)。ジェントリフィケーションにより生まれ変わった現在の姿はhttps://michigancentral.com/をご覧ください。」

そうしたジェントリフィケーションは、一面ではよい効果をもたらしているように見えます。新しいお店がオープンし、人口が増え、観光客が訪れるようになり活気が現れるのは確かでしょう。反面では、元々そこにあったコミュニティを破壊し、地価を高騰させ、経済的な分断を深めます。再開発された場所にはもう富裕層しか住めず、都市から多様性が失われます。

本書はジェントリフィケーションがもたらすこの両面性に注目し、それを推進する側(ジェントリファイアー)とそれにより立ち退きや転居を余儀なくされる側の両方に取材して、現代の都市の暮らしと住まいが直面する現実を描き出します。またジェントリフィケーションが推し進められるメカニズムや、その歴史的背景にあるアメリカの人種差別的な住宅政策についてもわかりやすく説明します。

大規模な再開発計画がまだまだ続く東京や首都圏に住む人々にとってもジェントリフィケーションは他人事ではなく、眼前で進むこの現象を知り、自身との関係を理解するためにも『都市殺し』は大きな助けになると思います。書店で手に取ってご覧になっていただければ幸いです。

本書の概要については、出版社のウェブページをご覧ください。
https://www.akashi.co.jp/book/b665136.html
本書の内容については、解説の一部抜粋を以下のウェブメディアで読むことができます。
https://gendai.media/articles/-/153977