「ヨーロッパ・アメリカ特殊講義A」の授業で東京国立博物館を見学しました

「ヨーロッパ・アメリカ特殊講義A」は、今夏、ギリシャ美術をテーマに、研究方法を学ぶ授業を行いました。
美術作品の研究で、実物を見ることは、言うまでもなく重要です。ギリシャ美術の場合、日本国内ではコレクションは限られていますが、じつは、上野の東京国立博物館の東洋館に、ギリシャ・ローマ美術関連のコレクションが展示されています。

今回、東洋館二階の西アジアの遺跡の出土品等を見学しました。
まず、《山羊頭形リュトン》(陶器)を紹介しましょう(写真1)。ギリシャ・ローマ世界では、陶器で様々な動物(牡牛、獅子、ロバ、羊など)の頭部をかたどった、リュトン(角杯)が作られました。リュトンはオリエント起源の金属器が元と考えられています。東京国立博物館の《山羊頭形リュトン》は、アケメネス朝時代(前6~前5世紀)のもので、イラン出土です。なんとも優しいお顔の山羊ですね。

そして、注目したいのが、西アジアのハトラ遺跡(現在のイラク北部)出土の、英雄ヘラクレス像です(写真2)。ヘラクレスといえば、ギリシャ神話に登場する、筋骨隆々とした、怪力の持ち主です。ヘラクレスのイメージはアジアを東斬する過程で、各地の英雄像と重ねあわされ、さまざまなバリエーションが生まれました。
このヘラクレス像が出土した都市ハトラは、ローマ帝国とアルサケス朝パルティアを結ぶ隊商路の要衝の地でした。グレコ・ローマン美術の影響を示す彫刻が多数出土しています。大きなアーモンド形の目は、パルミュラ彫刻の影響を感じさせます。ローカル色豊かな、どことなくユーモラスなヘラクレス像です。

東海大学は、東京国立博物館のキャンパスメンバーズなので、学生・教職員はフリーで見学できます。今回参加の学生は皆、東洋館の見学が初めてということでした。ぜひ、今後も気軽に足を運び、古代美術の世界を存分に味わってほしいと思います。