機械工学科の窪田准教授の研究が特許を取得しました

工学部機械工学科の窪田紘明准教授と研究室に所属した三上拓徒さん(大学院工学研究科2022年度修了)が取り組んできた鉄の管(チューブ)の高強度化を実現させる加工技術が、このほど特許を取得しました。窪田准教授と三上さんの連名で2121年9月に出願し、今年5月26日に特許登録された「ハイドロフォーミングによる加工方法、金型、金型モジュールおよびハイドロフォーミングの加工装置」(特許第7687672号)は、自動車や医療機器などの材料となる鉄の管(チューブ)の高強度化を実現させる加工技術です。

窪田准教授らは、チューブを金型に入れて水圧で膨らませる「ハイドロフォーミング」の技術に着目。チューブと金型の間に強制的に潤滑剤を注入することで摩擦を軽減させ、材料が割れやすいという課題を解決し、さらにチューブの板厚を均一化することを確認しました。この技術は、特に衝突安全性能を担保する強度化と軽量化の両立といった難度の高い技術を擁する自動車部品などの製造に、大いに資する技術として高い期待が寄せられています。

研究室では現在、さらに研究を進めて4方向から潤滑剤を入れることで潤滑圧力を時間的・空間的に制御し、部材各部の金型との摩擦状態と板厚変化を自在に操り、同じ金型を使いながら板厚の異なる複雑な部品を製造できる技術開発に取り組んでいます。「研究を進める過程で、プログラムやシステムのパラメーターを変えることで板厚を自在にコントロールし、荷重がかかるコーナー部を厚くしてその他の板厚を薄くするといった複雑な部品製造が可能になると考えました。金型を変更せずとも潤滑状態の制御だけで板厚を調整する技術で、自動動車・航空機・医療機器・電子部品等の中空構造部材(チューブ材)の加工に適しており、部品数や材料削減によるコストダウン、板厚の最適配置、部材の軽量化,高強度化に活用が可能です。また、溶接等の接合部の無い一体成型が可能になり、工業デザインの意匠性向上にも貢献できます」と窪田准教授は展望を語ります。

研究室では、清水弥明さん(工学部4年次生)が3Dプリンターによる模型製作、佐々木求貴さん(修士1年次生)がコンピュータによるシミュレーション、堤大樹さん(同)が金型製作などそれぞれ中心となって、9月下旬に茨城大学で開催される日本塑性加工学会での成果発表に向けて実証実験に取り組んでいます。また、8月21日(木)、22日(金)に東京ビッグサイトで開催される「大学見本市2025~イノベーション・ジャパン」のカーボンニュートラル・環境分野にも、「部材の厚みを自在に制御するハイドロフォーミングの最新技術」をテーマに出展します。

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窪田准教授は、「この研究は、本学の連合後援会研究助成と総合研究機構研究奨励補助、金属等の塑性加工技術の研究・調査を支援する天田財団の助成を受けて進めているものです。今後も、産業界に役立つテーマで新たな領域の研究を開拓し、柔軟な学生らの発想力を存分に発揮できるよう、研究環境を整えたいと思います」と話しています。