教養学部人間環境学科の開講科目「エシカル消費論」(担当=岩本泰教授)で7月3日と10日に、学外講師による特別講義を実施しました。この授業は、持続可能な社会づくりに向けて具体的な消費行動を構想する能力を養うことを目的としており、今回はい草製品・畳・こたつ・ラグ・寝具製品を中心にインテリア商品の開発・製造・企画・販売を展開する総合インテリアメーカーの株式会社イケヒコ・コーポレーションの古賀義政氏がオンラインで講師を務めました。


4日の授業では古賀氏が、同社の事業や、資材調達から製造、物流、販売、消費までの一連の流れを指す「サプライチェーン」の構造を説明。「畳製品は複数の企業や職人の方々と分業で製作してきましたが、日本の住環境の変化により畳製品の売れ行きが低迷し、い草の作付け面積減少に合わせて関連事業も縮小してしまうという欠点がありました。中国では1社が資材調達から製造、物流といったサプライチェーンを一手に担うケースが多く、我々も業務の一部を中国の企業に委託しています。日本での製造にこだわりはありましたが、このままでは産業が伝統工芸品になってしまうという危機感から決断しました」と、業態の変化を説明しました。また、「時代の変化により衰退していくと思う産業」を問いながら、「産業構造の変化についていけない産業が衰退していると感じています。時代の変化に鑑み、持続可能な方法を探して実践することが大切。これから社会に出る皆さんは、環境の変化を敏感に察知する視野の広さ、対応するためのアイデアを企画する知見の広さ、実行する行動力の3点を意識し、自分には何ができるのかを考えてみてください」と呼びかけました。
10日の授業では岩本教授が、イケヒコ・コーポレーションのホームページで公開されているブログ『繋がるものづくり』を読んだ学生の感想を紹介。生産者、加工先、開発者、消費者といった同社に携わる多様な人々の声をつづるブログを読んだ学生たちは、「日本の伝統や自然素材を大切にしながら、現在に暮らしにも合う製品を作り続ける姿勢に感動した」「農家や障がい者福祉施設との連携など、モノを通じて人と人、地域と社会をつなぐ姿勢が感じられた。エシカル消費の視点からも非常に価値がある」など多様な感想を述べていました。続いて、同社の事業とSDGsとの関係性を分析し、自然素材を用いた製品加工における配慮や魅力を古賀氏が解説。学生からは、「い草を用いた製品は、石油由来の科学繊維製品の使用を減らし環境負荷低減につながっていると感じた」「身の回りにある伝統的な素材や製品に目を向けることが、今の自分にできることだと思う」といった声が聞かれました。