東海大学所蔵の古代エジプト・パピルス文書に関するラウンドテーブルを開催しました

11月28日に湘南キャンパスで、総合研究機構プロジェクト「東海大学所蔵古代エジプト・パピルス文書の修復保存・解読・出版に関わる国際プロジェクト」のラウンドテーブル(意見交換会)を開催しました。本学の「古代エジプト及び中近東コレクション(AENET)」に所蔵しているパピルス文書を解明するため、2013年度に本プロジェクトが発足。パピルス学会の第一線で活躍する研究者や本学の教員、学生らが修復保存や解読作業に取り組んできました。今回の取り組みは本プロジェクトに携わっている研究者らが一堂に会して調査・研究の成果発表や意見交換を行うもの。学生や教職員、他大学の研究者、博物館の学芸員など約20名が参加しました。

はじめに本プロジェクトの運営を担当するアジア文明学科の山花京子准教授が、これまでの活動を紹介。400片ほどある紙片の中から重要度の高い約50片について、解読した内容を出版する計画であることを報告しました。続いて「パピルス学の現在と未来―東海大学所蔵パピルス文書の解読―」をテーマに研究者らがこれまでの成果を報告。文書の解読に従事したアメリカ・イエール大学のジョセフ・マニング教授は、会計や契約文書など当時の社会を知るための手がかりとなる貴重な資料が含まれていることを説明しました。また、学生に修復保存技術を指導し、自らも本コレクションの修復保存に携わったドイツ・ベルリン新博物館のミリアム・クルシュ氏は、夏季は高温多湿で冬季は乾燥する日本の気候に合わせ、パピルスの周囲に給水紙を置いてガラス板で挟むといった独自の保存方法を本学の研究者とともに考案したことを報告しました。

続いてパピルスの修復師を目指して研鑽を積んでいる文学部歴史学科考古学専攻の小野智仁さん(4年次生)と藤沼一貴さん(同)が、パピルス紙の製造方法や、ミイラマスクなどに再利用されたパピルス紙(カルトナージュ)に関する研究の概要を報告。赤外分光法によるパピルス紙の劣化具合の判定や各種分光解析による顔料素材の特定について研究している工学部材料科学科の葛巻徹教授と大学院工学研究科金属材料工学専攻1年次生の高橋悠さんが、解析手法の特徴や研究成果をそれぞれ発表しました。

コーヒーブレーク後には山花准教授が司会を務め、研究内容やこれまでの活動、今後の展開などについて参加者全員で意見交換を行いました。マニング教授は本プロジェクトについて、「文献的な研究にとどまらず、工学部の研究者らと協力して幅広い視点からパピルス文書を研究しようとする世界でも珍しい画期的な取り組み」と高く評価。「今後の研究成果に期待しています」と述べました。

最後に山花准教授が、「プロジェクトに協力してくださった方々に心から感謝します」とあいさつ。「今回解読された文書を発信することで世界中のパピルス文書との関連が判明し、古代史の新たな知見につながる可能性があります。今後も皆さんにご協力いただきながら、本コレクションの解明を進めていきたい」と語りました。
なお、調査研究のテーマと発表者は以下のとおりです。(※発表順)

◇「東海大学古代エジプト及び中近東コレクションのパピルス文書の歴史的評価と重要性」
 ジョセフ・マニング教授(アメリカ・イエール大学)
キャサリン・デービス氏(ドイツ・チュービンゲン大学)
◇「東海大学所蔵パピルス文書の修復と大学に於ける修復師養成ワークショップについて」
 ミリアム・クルシュ氏(ドイツ・ベルリン新博物館)
◇「パピルス紙とインクの復元製作」
小野智仁(文学部歴史学科考古学専攻4年次生)
◇「東海大学所蔵パピルス文書のカルトナージュ片の研究」
藤沼一貴(文学部歴史学科考古学専攻4年次生)
◇「パピルス文書の分光解析」
葛巻 徹教授(工学部材料科学科)
◇「蛍光X線分析法(XRF)、X線回折法(XRD)、電子線マイクロアナライザー(EPMA)による顔料の解析」
高橋 悠(大学院工学研究科1年次生)

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