海洋学部水産学科の福井篤教授の研究室に所属する村﨑謙太さん(大学院生物科学研究科博士課程1年次生)らのグループが、静岡県駿河湾で採集したクサウオ科の深海魚の1新種を「Careproctus surugaensis Murasaki, Takami and Fukui, 2017(標準和名:スルガビクニン)」と命名し、11月22日に日本魚類学会発行の学会誌『Ichthyological Research』のオンライン版(https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs10228-017-0611-6)に掲載されました。
福井研究室では2000年から毎月3日ほど、小型舟艇「北斗」(総トン数18t)を用いて駿河トラフで「深海近底層調査」を行っており、仔魚から成魚までを採集できる方法を開発。今回の「スルガビクニン」は三保灯台から約10km沖の駿河湾北部、水深1450~1570mの地点で2015年10月28日に採集されたものです。それから約2年かけて調べ、これまで知られているコンニャクウオ属128種とは脊椎骨数などの計数形質、歯が三葉形であること、鰓孔下端と肛門の位置、腹吸盤の大きさ、黒色を帯びた腹腔と淡いオレンジ色の体などが異なることから、新種として報告しました。
村﨑さんは、「月例調査では、深海魚だけでなく、動物プランクトンなどさまざまな生物が採取されるので、最初に見たときは”変わった魚がいるな”という程度の印象でした。それからたくさんの文献を調べ、100年以上前の文献に載っている種については、標本を保管している博物館に問い合わせて写真を取り寄せるなどして調査しました。クサウオ科の魚は体がもろく表面はゼリー状のようなもので覆われているので、今回のスルガビクニンは採集される際に剥がれてしまっていますが、実際には全身がオレンジの魚だと思います」と話します。
福井教授は、「これまで長年にわたって調査してきた成果が今回の発見につながったと思います。これほど岸から近い場所で新種が見つかるのは珍しいこと。駿河湾の深海近低層はまだ未知の海ですから、調べる価値があります」とコメント。村﨑さんは、「新種として認められ、これまでお世話になった先生方や両親に感謝の気持ちでいっぱいです。自分の身近なところにも、まだまだわからないことはたくさんあると感じました。これからも調査を続けていきたい」と今後への抱負を語りました。