岩手県立高田高校で「海洋生態系の調査研究」の成果発表会を実施しました

海洋学部が協力している東北マリンサイエンス拠点形成事業「海洋生態系の調査研究」の成果発表会を、2月17日に岩手県立高田高校で開催しました。本事業は、東日本大震災における地震と津波が東北沿岸域の海洋生態系に与えた影響と回復過程を明らかにし、漁業などの復興に貢献することを目的に国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)などが手掛けているものです。本学部からは、海洋地球科学科の坂本泉准教授と海洋生物学科の田中克彦准教授が参画し、東日本大震災で被害を受けた陸前高田市など三陸沿岸域の海洋環境調査を年2、3回実施し、年間約250名の海洋学部生が参加。14年からは、JAMSTECとともに調査結果を地域に還元するべく、高田高海洋システム科の生徒を対象とした出前観測・実験を年2、3回開催しています。今回の発表会は、出前観測・実験に参加した生徒たちが主体となり、これまでの研究成果を市民に発表する場として初めて企画。広田湾漁協組合をはじめとする地元の漁業関係者、県や市の職員、生徒、教職員ら約150名が聴講しました。

発表会ではまず、JAMSTEC海洋生物環境影響研究センターの藤倉克則センター長と坂本准教授が研究の概要を説明。続いて海洋システム科の生徒6人が登壇し、広田湾の「水温」「塩分」の分布を可視化して作成したマップをもとに、季節や水深などによって異なる数値を解説しました。また、採泥調査の結果をもとにした底質環境の報告、市内の漁港周辺でサンプルを採取した生態系の調査結果も紹介し、今後は調査範囲を拡大して図鑑の制作にも取り組むと発表しました。

坂本准教授は、「10年計画で進めてきたプロジェクトが2021年度で最終年度を迎えることを受け、復興に関する本プロジェクトが研究者の調査・研究だけで終わるのではなく、若い世代を中心とした地元の方々が、将来に向け復興に携わるきっかけとして、地元高校生徒を巻き込んだ観測を企画しました。生徒たちは主体的に海洋調査ができるまで成長していますし、高校側もカリキュラムの一環として観測を継続していく方針です。後は、先輩から後輩へ観測・解析・発表の一連の活動が引き継がれ、高校の伝統として根付いてくれたらと願っています。2020年度は、スムーズに引き継げるようサポートする予定です。また、将来は漁協や市の水産課の役に立つような観測データを、高校のホームページなどで公開できる仕組みをつくることを目標としています」と話します。また、「漁業は後継者不足に悩まされている職業の一つですが、科学を取り入れた新しい視点で海と向き合う若手技術者が育ってくれればうれしい。岩手県で生まれ育った彼らが次の世代を担うことが、本当の意味での震災復興につながると考えています」と期待を寄せました。

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