地下海水陸上養殖サーモン「三保サーモン」の本格販売がスタートしました

東海大学が、静岡市や日建リース工業株式会社などと研究開発を進める「三保サーモン」の本格販売がスタート。12月17日に、静岡市のホテルクエスト清水で記者発表会が実施されました。三保サーモンは駿河湾の地下海水を用いて養殖されており、海水をくみ上げる時点では酸素をほとんど含まないため、アニサキスをはじめとした寄生虫症の心配もありません。また、加工・消費地の近傍で周年生産されるため、鮮度管理や消費機会に応じた安定提供を可能にしています。

本事業には代表機関の日建リース工業をはじめ、高度な鮮魚取り扱い技術を持つ「株式会社Aging Fish Japan」や人気回転ずしチェーン「かっぱ寿司」などを運営するコロワイドグループの「株式会社バンノウ水産」、清水区の海鮮製造業を営む「株式会社ふかくら」など民間企業が参画。さらに本学海洋学部や静岡市も加わった6次産業モデル※「地下海水陸上養殖サーモンバリューチェーン改善促進協議会」として、産学官連携で推進しています。本学では、約35年間にわたって駿河湾の地下海水を使った養殖方法の研究に取り組む秋山信彦教授や水産加工学や機能性食品学が専門の平塚聖一教授が中心となって、養殖環境整備や商品開発に協力。2020年10月には清水区三保にある本学敷地内に、日建リース工業が静岡市などの補助を受けて「三保地下海水養殖センター」を設立し、翌月から養殖を開始しました。現在も研究を進めながら21年度に20t、22年度には30tの生産を目指しています。

本格的な販売開始となり、17日からは静岡市内のかっぱ寿司やホテルクエスト清水などで提供が開始されたほか、静岡市のふるさと返礼品「極上三保サーモン食べ比べセット」としても活用されています。同日に開かれた記者会見では数多くの報道陣を前に、各機関の代表者が登壇。日建リース工業の関山正勝代表取締役社長らが事業概要を説明し、本学の山田清志学長は、「清水キャンパスの海洋学部や熊本キャンパスに拠点を置く農学部で良質な食品開発を展開しています。サーモンは日本だけでなく、世界中からの需要も高く、三保サーモンが今後、静岡県はもちろん、日本の名産品になることを期待し、今後も研究開発に貢献していきます」とあいさつしました。また、静岡市の田辺信宏市長は本事業が「令和3年度水産庁バリューチェーン改善促進事業」に採択されていることに触れながら、「静岡県にはウナギやシラス、桜エビなどさまざまな名産品がありますが、三保サーモンもこれらに負けないだけの魅力があります。静岡市では本気になって世界に売り出そうと決意しております」と抱負を語りました。
会見後には、試食会や三保地下海水養殖センターの見学会も実施。秋山教授は、「サーモンの養殖は東北地方を中心に日本各地でも行われていますが、夏場は水温が高くなってしまうため、年間を通じた出荷が難しいというのが現状です。一方、駿河湾の地下海水は年間を通じて水温が約18度から変化せず、通年での出荷が可能。今後も三保サーモンのより安定的かつ効率的な養殖法を探りながら他種の養殖にもチャレンジし、地域活性化に貢献していきたい」と話しています。

※6次産業モデル:農林水産業を活性化だけでなく、農山漁村の経済を豊かにするべく、農1次産業(農林水産業)と2次産業(工業・製造業)、3次産業(販売業・サービス業)が連携する産業化モデル。「1次産業の1」×「2次産業の2」×「3次産業の3」の積から6次産業と称される。