水産学科の後藤教授が富士通との共同研究で超音波AIによる冷凍ビンチョウマグロ脂のり検査を実現する装置を開発しました

海洋学部水産学科の後藤慶一教授が、富士通、イシダテックとの共同研究で超音波解析AI技術による世界初の冷凍ビンチョウマグロの脂のり検査装置をイシダテックと共に開発。社会実装に向けた記者説明会が4月9日に、川崎市・Fujitsu Technology Parkで開かれました。マグロ産業の成長と国際化は近年急速に加速しており、これまで生食が主流ではなかったビンチョウマグロも脂がのった個体を中心に外食産業での需要が高まり、品質要求も増大しています。一方で、その品質判定には尾部分の切断や解凍といった工程や「目利き」による判定が必要で時間もかかり、人による評価のばらつきや人材不足など多くの課題がありました。

この装置はそうした背景と課題解決に向け、マグロの「おいしさ」の研究に知見を持つ本学と、超音波解析AI技術を開発した富士通が2022年4月から共同研究を行ってきた成果で、従来は1本当たり60秒程度かかっていた品質判定が12秒に短縮され、判定の精度も高められます。食品や医薬品の機械装置を手掛ける静岡県焼津市の株式会社イシダテックがハードウェア開発を担当し、同社グループから切り出し・独立したスタートアップのソノファイ株式会社が、富士通から実施許諾および技術供与を受けた超音波解析AI技術を装置に実装。6月から販売が開始されます。

記者説明会には、後藤教授、富士通AI戦略・ビジネス開発本部本部長の岡田英人氏、イシダテック・ソノファイ代表取締役社長の石田尚氏が登壇。まず、石田氏が装置開発の経緯や製品の特徴、今後の展開などについて解説し、岡田氏が装置に実装されたAI研究の経緯や同社の研究開発体制などを紹介しました。会場からは個体による「おいしさ」の違いを図る適切な部位や精度などについて多くの質問が寄せられ、後藤教授が超音波AIによる非破壊検査に取り組んだ経緯などを交えて丁寧に答えました。

続いて、事前にこの装置による脂のり検査を経て「最も脂がのっている」とされたビンチョウマグロの個体と、「最も脂がのっていない」と判定された個体から切り出された刺身の試食も実施。参加者は、身の色合いの違いや味わいの違いなどを実際に確認しました。装置が設置された会場では、重さ20kgほどもあるビンチョウマグロを装置のベルトコンベアに乗せて超音波解析AI技術による判定の様子も披露。装置は500キロヘルツ程度の超音波を用いてマグロの中骨からの反射を読み取り、脂が少ないほど中骨からの反射が大きく超音波の波形が大きく振れる仕組みで、機器に設置されたモニターにわずか10数秒で個体内部の脂のりが判定できるグラフが表示されると、参加者からは感嘆の声が上がりました。

後藤教授は、「共同研究の成果で最新テクノロジーを駆使して“おいしさ”といった感覚的なものの見える化が実現した意義は大きいと思います。この装置は国内にとどまらず、ビンチョウマグロの漁獲量が圧倒的に多い海外の市場で役立つでしょう。装置による自動検査で脂のりのよい個体とそうでない個体が判別されれば、切り分ける以前にそれに合った活用方法に振り分けられ、ひいては海洋資源の無駄の削減にも大いに資することと期待されます」と話しています。