
医学部医学科の和佐野浩一郎教授(専門診療学系耳鼻咽喉科・頭頸部外科学領域)とデンマーク・コペンハーゲン大学認知症センターのカスパー・ヨーゲンセン上席研究員らが、日本における認知症予防の可能性を解析し、生活習慣や健康状態の改善により、38.9%が理論的に予防可能であることを解明。その成果をまとめた論文が1月12日に、国際的医学誌『The Lancet Regional Health – Western Pacific』に掲載されました。
厚生労働省によると、2022年時点では65歳以上の約12.3%が認知症、約15.5%が軽度認知障害(MCI)で合計約1000万人となっており、2050年には1200万人に達すると予測されています。新たな治療法が導入されていますが、効果や適応条件の厳しさといった課題があるため普及が難しく、発症を防いだり遅らせたりする「予防」の重要性が高まっています。世界でも同様の問題が指摘される中、権威ある医学誌『The Lancet』の認知症委員会は、2024年に欧米を中心とした国際データを解析。生活習慣や環境要因といった危険因子への対策を講じることで、世界の認知症の約45%が予防可能であるとの結果を報告しました。
和佐野教授らは日本における認知症予防の可能性を調べるため、この方法を応用。同委員会が科学的根拠に基づいて特定した「教育の低さ」「難聴」「社会的孤立」といった14の修正可能な認知症危険因子について、公的統計や疫学データなど信頼性の高い国内データを用いて解析しました。その結果、日本における最大の危険因子は「難聴」で、次いで「運動不足」、「高LDLコレステロール」と続くことを特定。さらに、これらを含む14の要因を一律に10%低減させるだけで、将来的に20万人以上の認知症の発症を抑制できる可能性を見いだしました。和佐野教授は、「この結果は、国内で優先的に介入すべき認知症の危険因子を科学的に示したものであり、今後の認知症施策決定への活用が期待されます」と意義を説明します。
2025年4月に医学部付属病院に設置した感覚器疾患センターのセンター長として、加齢性難聴の診療や研究に取り組む和佐野教授は、「この成果を多くの人に知っていただくとともに、地域の医療機関と連携して難聴の早期発見・早期治療や予防を促す活動を推進し、人々の生活の質の向上や認知症予防に貢献したい」と語っています。
※『The Lancet Regional Health – Western Pacific』に掲載された論文は下記URLからご覧いただけます。
https://doi.org/10.1016/j.lanwpc.2025.101792
