
医学部付属病院認知症疾患医療センターでは10月1日に伊勢原キャンパスで、特別講演「人生100年時代を笑顔で生きる~認知症を考える~」を実施しました。国際アルツハイマー病協会と世界保健機関が定めた9月21日の「世界アルツハイマーデー」にちなみ、認知症に関する普及啓発活動の一環として企画したものです。今回は、高齢者向けの福祉サービスやグループホームなどを展開する株式会社あおいけあ代表取締役の加藤忠相氏と、メモリーケアクリニック湘南院長で認知症専門医の内門大丈氏が講演。地域住民や医療・福祉関係者ら多数が参加しました。
初めに、本センターの永田栄一郎センター長(医学部医学科教授)が開催の趣旨を説明。「認知症に関する正しい知識を持っていただくとともに、皆さんの交流の場になれば幸いです」とあいさつしました。
続いて登壇した加藤氏は、地域で孤立している高齢者を福祉サービスにつなげる取り組みや、丁寧なアセスメントに基づいたケアプラン策定の意義を説明。認知機能や活動量が低下している高齢者が、料理や大工仕事といった体で覚えている記憶(手続き記憶)を生かすことで「誰かの役に立つ喜び」を見出し、施設の仲間や地域の子どもたちと生き生きと過ごす様子を紹介し、「高齢者が幸せな最期を迎えられれば、その姿を見た子どもたちは『年を取るのは怖くない』と考え、希望を抱いて未来に向かって進めるでしょう。認知症ケアの目的は、高齢者が安心して旅立てる環境を整えて子どもたちに見せること。そんな環境を皆さんと一緒につくりたいと考えています」と語りました。
内門氏は、「認知症は日常生活に支障が出て一人暮らしができない状態」と説明し、初期症状や種類、診断・治療法、予防法をはじめ、他の疾患や薬の服用と認知機能低下との関係について解説。地域包括支援センターや認知症初期集中支援チームといった、認知症が疑われた場合に相談できる窓口についても紹介しました。最後に、「誰もが認知症になる可能性がある」と強調し、「認知症の人の世界は、過去や未来よりも『いま』という時間で占められています。認知症の人がその人らしく生き生きと幸せに暮らせることを願うなら、未来を憂えたり過去の治療にとらわれるより、ぜひ『いま』を充実させてください」と結びました。


各講演後には活発な質疑応答が交わされました。参加者からは、「とても楽しく学べました。認知症になっても豊かに暮らせると知り、不安が和らぎました」「その時々を楽しむことが大切だと分かりました。家族や友人にも伝えたい」といった感想が聞かれました。
なお、9月29日から10月1日まで当院の東海ホールに認知症の予防や診断・治療に関するポスターを展示し、医師や看護師、薬剤師、栄養士らが随時相談に応じました。