医学部付属病院が「炎症性腸疾患」をテーマに市民公開講座を開催しました

伊勢原キャンパスの医学部付属病院で11月15日に、市民公開講座「炎症性腸疾患」を開催しました。潰瘍性大腸炎とクローン病に代表される炎症性腸疾患(IBD)に関する医療のさらなる充実に向けて今年4月に開設した「炎症性腸疾患センター」が企画したものです。当日は、IBD治療の第一人者である慶應義塾大学名誉教授・日比紀文氏の特別講演をはじめ、大船中央病院消化器・IBDセンター長の遠藤豊氏、当院消化器内科、消化器外科の医師らによる最新の治療法等に関する解説も実施。患者や家族、医療従事者ら約80名が参加しました。

初めに、大上研二医学部長が登壇。「IBDの患者さんは増加傾向にあり、社会全体で疾患への理解を深めていくことが求められています。この公開講座が皆さまにとって有益な学びとなるよう願っています」とあいさつしました。

前半は、まず本センターの鈴木秀和センター長(消化器内科、医学部医学科教授)が、センター設立の背景や目的を紹介し、「若年で発症し、寛解と再燃を繰り返すIBDは、根本的な治療法がなく、患者さんが長期にわたり向き合い続けなければならない疾患です。大切なのは患者さんを一人にしないこと。消化器内科と外科はもちろん、小児科、小児外科、産婦人科といったさまざまな診療科や多職種が連携し、“患者さんと共に人生を歩む場”として本センターの機能を充実させていきます」と語りました。続いて、遠藤氏がIBDの特徴や症状について説明し、本センターの上田孝医師と大宜見崇医師が薬や手術などの治療法を解説。総合相談室の原田秀樹社会福祉士が公的補助制度について紹介しました。

後半の特別講演では、日比氏が「炎症性腸疾患:患者さんと寄り添った50年」と題して、IBDが日本で注目され始めた1970年代以降の研究・臨床の歴史や現状と課題について解説。「正確な診断と個々の病態に適した治療法の選択により、患者さんが寛解状態を維持して通常の日常生活を送れるよう支援することが大切です。『炎症性腸疾患センター』は、IBDの患者さんや家族に対する総合的なサポートはもちろん、原因の解明や新規治療法の開発にも貢献する機関として、大いに期待しています」と語りました。また、IBDの専門医が中心となって立ち上げた一般社団法人「IBD患者さんの日常生活を彩る会」の概要も紹介しました。

終了後には会場から多くの質問が寄せられ、講師が丁寧に回答しました。参加者からは、「近隣に相談できる医療機関があるのは大変ありがたい。専門の先生が“人生の伴走者”になってくださると思うと心強く感じます」「友人がクローン病のため参加しました。IBDの患者さんの不安や悩みが分かったので、今後はより細やかな気遣いをして支えたい」といった感想が聞かれました。

※当日のプログラムは以下のとおりです。
【総合司会】
 鈴木秀和教授(炎症性腸疾患センター長、医学部付属病院消化器内科)
【開会挨拶】
 大上研二医学部長
【講演】
 1.「東海大学の炎症性腸疾患センターについて」
   鈴木秀和教授
 2.「炎症性腸疾患ってどういう病気?」
   遠藤 豊氏(大船中央病院消化器・IBDセンター長)
 3.「炎症成長疾患はどう治すの?」
   上田 孝助教(炎症性腸疾患センター、医学部付属病院消化器内科)
 4.「炎症性腸疾患はどう治すの?」
   大宜見 崇助教(炎症性腸疾患センター、医学部付属病院消化器外科) 
 5.「炎症性腸疾患患者さんへの公的補助について」
   原田秀樹社会福祉士(医学部付属病院総合相談室)
【特別講演】
 「炎症性腸疾患:患者さんと寄り添った50年」
 日比紀文氏(慶應義塾大学名誉教授)
【閉会挨拶】
 鈴木秀和教授