総合医学研究所では11月17日に伊勢原キャンパスで、「2025年度第2回公開セミナー」を開催しました。このセミナーは、本研究所が推進する研究プロジェクトについて所員が理解を深めるとともに、当該研究のさらなる進展を目指して実施しています。今回は、オミクス部門長の中川草准教授(医学部医学科基礎医学系分子生命科学領域)が展開するコアプロジェクト1「ウイルス様エレメント(VE)研究基盤の創設と発展」の関連企画として、Genetics Society of Korea(韓国遺伝学会)の前会長でKosin University College of Medicine(高神大学医学部)教授のHee-Jae Cha氏が講演。所員や医学部の教員をはじめ、研究イノベーションセンターの職員や大学院生ら多数が参加しました。

初めに中川准教授が企画の趣旨を説明し、Cha氏の経歴と共同研究に至る経緯を紹介しました。続いて登壇したCha氏は、「機能ゲノミクスによるがんの遺伝子機能の探索」をテーマに、自身が取り組む研究の概要をはじめ、がんの増殖や転移に関連する遺伝子の同定、タンパク質「チモシンβ4」の役割の解明といった研究成果について解説。「遺伝子の働きを解明する遺伝子機能学は、がんを含む多様な疾患の原因の特定や治療法の開発につながる分野として注目されています。急速に進歩する遺伝学との融合により、複雑な生物学的プロセスに関する理解がさらに進展すると考えています」と語りました。終了後には活発な質疑応答や意見交換を行いました。
最後に、本研究所の稲垣豊所長(医学部医学科基礎医学系生体機能学領域教授)がCha氏に謝辞を述べ、「遺伝子機能学は、今後の発展が大いに期待される分野であると考えています。本研究所においては、第4代所長の故・猪子英俊先生、第5代所長の井ノ上逸朗先生(国立遺伝学研究所特任教授)らの伝統を引き継ぎ、中川准教授が関連研究に取り組んでいます。さらなる進展に向けて引き続きご協力をお願いします」と結びました。
企画した中川准教授は、「Cha先生とは、2016年6月に韓国・釜山で開催された日韓トランスポゾン研究会で知り合ってから10年近い付き合いになります。今回は、Cha先生が立ち上げたアジア遺伝学会(AGCC)の関連で来日されていたことを機に本学でのセミナーをお願いし、ご快諾いただきました。私自身も初めてお聞きする話が多く、また日本語でご発表されたことにも感銘を受けました。今後も、新たな共同研究などへの展開を見据えて連携していきたい」と話しています。


