医学部医学科の細川准教授、鎌特任助教らによるT細胞の分化メカニズムに関する研究成果が『Journal of Experimental Medicine』に掲載されました

医学部医学科基礎医学系生体防御学領域の細川裕之准教授(総合医学研究所)と鎌裕一特任助教らの研究グループが、造血幹細胞からT細胞への分化を促すメカニズムを解明。その成果をまとめた論文が12月4日に、医学雑誌『Journal of Experimental Medicine』オンライン版に掲載されました。

T細胞は免疫システムに重要な役割を担っています。その元になるのは造血幹細胞で、骨髄から胸腺と呼ばれる臓器に移動してT前駆細胞になり、T細胞へと分化します。造血幹細胞にはNotch(ノッチ)受容体と呼ばれる物質が発現し、胸腺の上皮細胞にはリガンドと呼ばれる物質が発現しており、造血幹細胞が胸腺に移動して2つの物質が接触した瞬間に、Notch受容体からシグナルが送られてT細胞への分化プログラムが始まることが知られています。しかし、このシグナルによってどのように分化が誘導されるかは明らかにされていませんでした。

研究グループは、造血幹細胞から成熟したT細胞に分化するまでの間、常に一定量が発現している「RUNX(ランクス)転写因子」(特定のゲノム領域に結合し、遺伝子の発現を左右する物質)に着目。シグナルを受け取る前の造血幹細胞と受け取った直後のT前駆細胞について、RUNX転写因子の挙動や同転写因子の機能を欠損させた際の遺伝子発現の変化を網羅的に調べ、全データを統合して解析しました。その結果、シグナルを受け取る前の造血幹細胞ではRUNX転写因子がT細胞分化に関わる遺伝子の発現を抑制し、シグナルを受けた後のT前駆細胞では逆に同遺伝子の発現を活性化することを見いだしました。

細川准教授は、「RUNX転写因子はNotchからシグナルを受けると、造血幹細胞をT細胞へと分化させるために必要な場所(ゲノム領域)を探し、そこに仲間たち(分子集合体)を呼び集めて分化を促進します。逆にシグナルがなければ別のゲノム領域に結合し、違う仲間と共にT細胞への分化を抑制します。つまり、RUNX転写因子は働く場所や仲間を変えることでT細胞への分化プログラムを制御することが分かりました」と説明します。

細川准教授と鎌特任助教は、「Notch受容体やRUNX転写因子の異常はがんを引き起こすことが知られています。本研究でこれらの機能の一端が明らかになったことで、がんの発症機序の解明や治療法の開発につながると期待されます。さらに、造血幹細胞からT細胞への分化の第一段階が分かったため、iPS細胞をT細胞へと分化させるといった再生医療の基盤となる可能性も秘めています。引き続きRUNX転写因子の機能を追究していきます」と話しています。

※『Journal of Experimental Medicine』に掲載された論文は下記URLからご覧いただけます。
https://doi.org/10.1084/jem.20250911