建築学科の杉本教授が設計した(仮称)五條市総合体育館の現場見学会が行われました

工学部建築学科の杉本洋文教授が設計し、日本で初めて50mスパンの開放空間を持つ木造大型公共施設として奈良県五條市で建設が進められている「(仮称)五條市総合体育館」の現場見学会が、6月3、4日に行われました。この体育館は、吉野杉を中心に林業が盛んな市内の産業資源を生かし、奈良県中南部のスポーツ・文化・観光の拠点となる施設を目指して整備されているもので、今年10月に完成予定です。見学会には、大田好紀市長をはじめ市民らが多数来場しました。

この建物は、アリーナや練習場、会議室などからなる1階と、客席で構成される2階からなる複合施設です。特徴は、鉄筋コンクリート造の基礎部分の上に、奈良県産の杉約1700本分(住宅約100軒分)を使ってアリーナは48m×42mの柱のない大空間で、木材は一般的な住宅建築で用いられる集成材を使用。材木同士を金物で接合し、4角形の立体トラスに組んだ部材の間に、構造最適化を図り最小限の鉄骨の筋交いを入れる木トラス工法を取り入れ、全体で屋根の加重を支える構造となっています。建物は約1700名収容で、災害時には1700名を収容できる防災拠点としても活用される予定です。1階部分の壁と床にも杉材をふんだんに使用。2階の壁には木材チップとコンクリートを混ぜた「木合セメント板」を用いて防火・防音効果を高めており、観客席のベンチにも奈良県産のヒノキ材を用いる予定で、全体で40年生の立木に換算して約2600本分の県産材を使っています。

当日見学者からは、「木の香がすばらしい。地元の新たなシンボルになるのでは」、「今から完成が待ち遠しい」といった声が聞かれました。大田市長は、「地域の材木資源をふんだんに使用した施設を実現してくれたことに大いに感謝しています。県産材の利用活性化に向けた新たな一歩となるよう、積極的に活用していきたい」と話しています。

杉本教授は、「学校や体育館といった公共施設の木造化は国の方針として進められていますが、林業が黒字になっているヨーロッパ諸国に比べると木材の利用が進んでいないのが現状です。今回採用した工法は、奈良県以外の材木でも利用できるだけでなく、さらに中大規模の建築物まで自在に作れるなど汎用性が高いという特徴を持っています。今後もさまざまな活動を通じてこの技術の普及を図り、木材の”地材池匠”の実現を支援して、日本の森林資源の活用を全国的に応援してゆきたい」と話しています。

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