医学部の今西教授らの研究グループがバクテリアのゲノムを短時間で解析し、特定する基礎技術の構築に成功しました

2017年07月20日

医学部基礎医学系の今西規教授らの研究グループが、細菌感染症の原因菌のゲノムを短時間で解析し、特定する基礎技術の構築に成功しました。この研究成果は、7月18日午前10時(イギリス時間)配信のオンラインジャーナル『Scientific Reports』に掲載されました。

研究は、ポータブル型DNAシーケンサ「MinION」(Oxford Nanopore Techology社製)を分析機器として用い、2時間以内で細菌種と系統を同定することを可能にしたものです。これまで細菌感染症の原因菌判定には細菌培養法が用いられてきましたが、この手法では同定までに1日から2日ほどの時間を要するという課題がありました。今西教授らのグループは、MinIONに2台のPCを組み合わせて分析する独自のゲノム解析システムを開発。片方のPC(PC-a)には独自に作成した約8万のバクテリアのゲノム情報が組み込まれたデータベース「GenomeSync」を構築し、もう一方のPC-bでMinIONを制御してDNA配列情報を読み取り、PC-aにその情報を送信、相同性検索ソフトの「BLAST」を用いてPC-aのデータベースとリアルタイムに照合することで、主な細菌種であれば2時間以内で同定できるようにしました。

すでにこれまでの研究で、医学部呼吸器内科の浅野浩一郎教授の研究室から提供を受けた重症肺炎患者の胸水を本システムで解析したところ、原因と考えられる嫌気性菌を検出することに成功。また5月23日に仙台で開催された学会「NGS現場の会第5回大会」でこの解析システムのデモンストレーションを実施し、多くの聴衆の目の前で実際に細菌の種を判定できることを示しました。

今西教授は、「これまでは原因菌の特定に時間がかかっていたことから、細菌感染症の患者に対しては複数の抗菌薬を組み合わせた治療が行われてきました。しかし、それがかえって患者の肉体的な負担を重くし、薬剤の効かない耐性菌を生むなどの問題がありました。短時間での原因菌解析が可能になれば、原因菌にピンポイントで効果を発揮する薬剤の投与が可能になり、そうしたリスクも減少させられる可能性があると考えています。また、特定地域で短期間に蔓延する感染症の診断と治療にも役立つと期待しています。一方で本システムにはコスト面などで課題もあり、分析に専門の技術者が必要になるなど広く普及させるには今後も改善の努力を続ける必要があります。今後もソフトウエアの開発とデータベースの充実を進めることで、さまざまな感染性疾患の原因を解析できるシステムの構築を目指したい」と話しています。

なお本研究は、以下の研究予算の支援を受けて実施されました。
・国立研究開発法人日本医療研究開発機構の感染症研究国際展開戦略プログラムの支援による研究課題「迅速・正確な感染症診断を可能にする病原微生物同定システムの開発」(平成27-29年度)
・公益財団法人大川情報基金平成27年度研究助成支援による研究課題「迅速な感染症診断のためのシーケンサ連動型ゲノム検索ソフトウエアの開発」
・文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業による東海大学の研究プロジェクト「高分子超薄膜から創成する次世代医用技術」

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