農学部食生命科学科では2025年度に、熊本県立熊本第二高校スーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業に協力しました。本取り組みでは、課題の設定から研究、発表まで高校生が主体となり、本学部卒業生で総合農学研究所の中島勇貴研究員(日本学術振興会特別研究員PD※)と日比知之特定助手がサポートしました。
「乳酸菌の発酵生成物による健康増進 〜抗酸化能と免疫効果の検証〜」をテーマに約1年かけて実験計画の立案からデータ解析、考察に至るまで、大学の研究環境を活用しながら実践的な研究活動を展開し、発酵食品の機能性に関する基礎的検討を行いました。2月24日に同校で開催された成果発表会で第2位という優秀な成績を収め、今夏に開催予定の「中国・四国・九州地区理数科高校課題研究発表大会」への出場を決めました。



【取り組みの概要】
近年、健康寿命の延伸や生活習慣病予防への関心の高まりを背景に、食品の「おいしさ」や「栄養価」に加え、科学的根拠に基づいた機能性が求められるようになっています。特に日本が強みとする発酵食品は、保存性の向上だけでなく、乳酸菌などの微生物が生み出す発酵生成物による生理機能の可能性が注目されています。しかし、その作用機序や健康への具体的な寄与については、基礎的検証を積み重ねることが重要です。一方、理数教育の分野では、知識の習得にとどまらず、自ら課題を設定し、仮説を立て、検証し、論理的に考察する探究的な学びが求められています。SSH事業は、こうした高度な科学的探究力の育成を目的とし、高校段階から本格的な研究活動に取り組む機会を提供しています。
本研究では高校生が中心となり、熊本県内農産物から乳酸菌を単離してトマトやサツマイモを発酵させた試料を作製し、消化酵素阻害活性や抗酸化作用、免疫調節作用の評価を行いました。その結果、農産物から複数株の乳酸菌の単離に成功し、特にトマト発酵物において機能性の向上を示す結果が得られました。本研究の発展により、県産農産物の付加価値向上や保存性の向上、さらには地域資源を生かした健康寿命延伸への貢献が期待されます。
熊本第二高の田上由真さん(3年)は、「発酵食品が抗酸化作用や糖吸収抑制などさまざまな健康効果をもたらし、乳酸菌の株によって効果が異なることに気づきました。発酵によって食品が長期間保存されることも確認できました。発酵食品の日常的な摂取は、高い健康効果が期待できると感じました」と話し、山田伊都さん(同)は、「大学の実験室や高校にはない実験器具を使用させていただき、生物学に興味を持つとともに、大学を身近に感じました。実験結果の分析やスライドの作成などプレゼンテーションの準備をする中で、科学的な思考を深めることができました」と話していました。指導に携わった日比特定助手は、「これまで授業を補助した経験はありましたが、高校生と一緒に長期間にわたって実験に取り組むのは初めてでした。時には実習を思い通りに進められない時もありましたが、中島研究員のサポートや、何より3名の生徒さんの頑張りもあり、なんとか一年間で一つにまとめられました」とコメント。中島さんは、「今回の取り組みは、単なる実験体験にとどまらず、仮説設定や実験デザイン、データ解析、科学的考察といった研究プロセスを実践的に学ぶ貴重な機会となりました。東海大学農学部では、今後も高大連携を通じて、次世代の科学人材育成に貢献してまいります。2026年度の地区大会でのさらなる活躍を期待しています」と話しています。
※2025年度当時