機械工学科の落合教授と畔津教授らの研究グループがNEDOの国際協力事業に採択されました

工学部機械工学科の落合成行教授と畔津昭彦教授らの研究グループが展開するプロジェクト「ピストンリング周りの燃料とオイル挙動の明確化研究」がこのほど、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の2019年度「国際研究開発/コファンド事業/日本―ドイツ研究開発協力事業(CORNET)」に採択されました。この事業は、互いの技術が競合しない分野での日本とドイツ企業等による技術開発やイノベーションにかかわる連携の促進を目指して、NEDOとドイツ産業研究協会連合(AiF)が両国コンソーシアム間の共同研究開発プロジェクトを支援するものです。 本学の総合科学技術研究所では、昨年度から学際型の共同研究ユニットとして「メソ領域における流れの可視化による新たな技術の創出」を展開。極小領域にあたるナノレベルから数十センチを超えるマクロレベルまでのさまざまな領域(メソ領域)で生じる物質の流れの解明を目指す研究を展開しており、本グループの研究もその一つとして取り組んでいるものです。

落合教授と畔津教授、高橋俊准教授(動力機械工学科)のグループではこれまで、東京都市大学や日本の自動車メーカーが結成している「自動車用内燃機関技術研究組合(AICE)」と連携し、エンジンの心臓部にあたるピストンリングが稼働している最中に、潤滑油であるエンジンオイルの流れ方を可視化する世界初の技術開発に取り組んできました。

エンジンは自動車の動力としてはもちろん、自家発電機などに広く用いられています。特にアジアやアフリカなど発展途上にある国々では、物流の要として、また、日々の生活における電力供給源であり、世界中で膨大な数が普及しています。こうした高い需要があるため環境対策技術の向上が欠かせない一方、エンジンが稼働している最中に内部で起きている現象の解明は進んでおらず、技術発展の大きな障壁となってきました。

そうした課題を解決する手法の一つとして研究グループでは、畔津教授が長年開発してきたフォロクロミズムの技術を応用。ピストンリング周辺で実際に油が流れている様子をリアルタイムで観察することに成功したほか、高橋准教授の開発した性質の異なる2種類の液体の流れをシミュレーションできる「混相流解析」と組み合わせることで、実験とシミュレーションの両面から可視化技術を高め、エンジン内のガソリンとオイルの流れを正確に把握できるようになりました。

今回のプロジェクトでは、これまでの成果をベースに東京都市大学のグループ、AICEとともに、ドイツのミュンヘン工科大学、ハンブルグ工科大学、ドイツの自動車メーカーが結成している技術研究組合「FVV」と協力。ハンブルグ工科大が持つ質量分析手法に基づくオイル消費量解析技術と東海大の持つフォトクロミズム技術を組み合わせて、ミュンヘン工科大学の可視化ガソリンエンジンや東京都市大学の可視化ディーゼルエンジンに適用することで、エンジン駆動中にピストンリング周りで生じている燃料やオイルの流れと消費量をより詳細に解明し、より高効率なエンジンの改良や開発につなげます。

東海大学グループの研究代表を務める落合教授は、「電気自動車の開発が世界的に進んでいますが、各社とも安定利用に向けたインフラの整備や安全で燃費のよい自動車の開発などの面で大きな課題を抱えています。そのため、動力としてだけでなく、自ら電力を生み出せる内燃機関(エンジン)が活躍する場面はこれからも広がると考えています。だからこそ、なんとしても技術革新を進めなければなりません。日本とドイツは、エンジン技術で世界のトップを走っており、より高効率で環境負荷の少ないエンジンを生み出す責任も負っていると思います。ドイツの研究機関と連携し、技術革新に貢献できる成果を出していきたい」と話しています。

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