医学部看護学科の井上玲子教授が「小児がんピアサポーター」の普及、養成に取り組んでいます

医学部看護学科の井上玲子教授(専門=小児看護学、家族看護学)が、「小児がんピアサポーター」の普及、養成に取り組んでいます。小児がんピアサポーターとは、小児がんの子どもを持つ家族らが自らの体験を生かして同じ立場にある者に寄り添い、悩みや不安を分かち合い、支え合う人のことをいいます。井上教授は、「昨今、小児がんピアサポーターの必要性は患者や家族だけでなく医療従事者からも認識されるようになってきました。そこで、公益財団法人や企業などからの助成を受け、より多くのピアサポーターを養成するための研修DVDを作成する準備を進めています。それにより小児がんピアサポーターが全国の医療施設で活動し、当事者と医療者が協働して小児がん医療環境の充実を図ることが目的です」と取り組みについて説明します。

小児がんは、年間約2000人から2500人が発症すると推計されています。成人のがんとは種類も治療法も異なり、予防も困難です。現在は70%~80%の患者に治療の効果が表れ、病気を制御できるようになってきましたが、小児の病死原因の第1位であることは変わりません。また、治療効果が上がった後も合併症や再発の可能性があるため、長期にわたるフォローが必要です。家族は、子どもへの病名の告知、治療法の選択、学校や教育、将来といったさまざまな不安をかかえながら治療を続けなければなりません。

井上教授は看護師免許取得後、小児専門病院の看護師として小児がん患者や家族に接する中で、患者同士の情報共有や支え合いの必要性を痛感し、病院内に初めて小児がんの家族会を設置しました。大学教員になった後も支援を続け、2008年には全国で活動する小児がん親の会で構成される「全国小児がん患者会ネットワーク」を中心になって設立。さらに、2012年には同ネットワークの有志10団体とともに「小児がんピアサポート推進協議会」を立ち上げました。現在は同協議会の事務局長として医師や看護師、臨床心理士らと協働し、小児がんピアサポーターの養成研修会を年に2回開催しており、これまでに約200名が受講しました。

井上教授は、「アメリカでは小児がんピアサポーターが医療チームの一員として活動しています。日本でも、医療文化や家族のメンタリティーにあった方法で、医療従事者とともに小児がん患者と家族を支援できる者として医療チームで活動できるようになってほしいと考えています。その準備として、現在活動している小児がんピアポーターや、その支援を受けた家族、医療従事者へのアンケート調査などを行い、効果を検証していく計画です」と今後の取り組みについて説明します。「研修会の運営には、看護学科の学生や、健康科学研究科の大学院生も自主的に協力してくれます。患者さんや家族と直接話すことで小児看護や家族看護について学びを深めている様子でうれしく思っています。小児がんピアサポーターの育成、普及啓発はライフワーク。より多くの人に認知してもらえるよう、これからも活動を続けたい」と話しています。

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