医学部付属八王子病院が骨粗しょう症による背骨の骨折の最新治療に関するプレスセミナーを開きました

学校法人東海大学では7月30日に東京・霞が関の東海大学校友会館で、骨粗しょう症による背骨の骨折の最新治療「経皮的椎体形成術(BKP)」に関するプレスセミナーを開催しました。医学部付属八王子病院整形外科の山本至宏医長(医学部医学科外科学系整形外科学講師)が、「骨粗しょう症性椎体骨折の最新治療 高齢者のQOL向上を目指して」と題して講演し、報道機関の記者ら約30名が参加しました。

2016年10月1日現在の65歳以上の人口は約3500万人(内閣府「平成29年版高齢社会白書」)。そのうち約1300万人が骨粗しょう症患者です。骨粗しょう症は、骨密度(骨を構成する組織の密度)の低下により骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気です。約4分の3が女性で、75歳以上の女性の2人に1人が発症しているといわれています。骨粗しょう症による骨折は、特に脊椎が多く、寝たきりになる大きな要因の一つにもなっています。高齢であることを考慮し、手術を避けて痛みを緩和しながらの保存的治療(安静加療)が主流となっていますが、下肢のしびれや痛み、下肢麻痺による歩行障害などの神経症状が出現した場合には、人工椎体置換術などの脊椎固定術が行われます。しかし、こうした手術は手術時間が長く、出血量も多く、高齢者にとっては大きな侵襲であり、入院期間が長期になってしまうことから、どの患者にも対応できるものではありません。

一方BKPは、骨折した椎体にバルーンを挿入して広げ、セメント(硬質プラスチック)を充填して固定させる手術です。背中の2カ所を5㍉ほど切開するだけで出血はほとんどなく、手術時間は約30分。術後2時間から3時間程度でコルセットを着用して自力歩行ができ、2日から3日後には退院が可能です。山本医長は、短時間で体に負担をかけずに施術できるBKPに早くから着目。2011年1月に保険適応となったことを機に、同年、当時勤務していた医学部付属病院で、付属4病院(付属病院、東京病院、大磯病院、八王子病院)では初めてBKPを実施しました。

山本医長は、「八王子病院では約3年間で、64歳から98歳までの169名にBKPを行いました。感染はなく、術後のアンケートでも、疼痛や腰椎機能、歩行機能、社会生活といったすべての項目で改善したとの結果が得られています。痛みを我慢し、悪化を懸念して動かずにいると、QOLが低下するだけでなく、最終的には寝たきりになってしまいます。それは本人にとっても家族にとっても大変つらいこと。高齢者の皆さんに、好きなことをして生き生きと過ごしていただくためにも、BKPを広めていきたい」と抱負を語りました。講演後には活発な質疑応答が行われ、終了後にも多くの参加者が山本医長に個別に質問する姿が見られました。

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