大学院工学研究科電気電子工学専攻2年次生の中村知亜梨さんが、昨年10月12日に発表された日本画像学会研究奨励賞(6月28~30日・千葉大学西千葉キャンパス)と、12月4日から6日まで札幌コンベンションセンターで行われた国際展示ワークショップ(主催:一般社団法人国際展示ワークショップ)の最優秀学生論文賞を受賞しました。
中村さんの研究テーマは「近赤外光で検知されるアンチモンドープ酸化スズの合成とその不可視材料としての応用」です。アンチモンドープ酸化スズ(ATO)は、アンチモンとスズという2つの元素を配合してでき、低コストで高い可視光透過率を併せ持っています。中村さんは、不可視二次元コードが商品パッケージなどに付与することで偽造を防ぎ、商品管理などへの応用も期待されるほか、パッケージのデザインを損なわないといった利点から、ATOを用いて紫外光や赤外光といった人の目に見えない光でのみ検知可能となる不可視二次元コードの印刷について検討してきました。今回の2件の受賞はその成果が評価されたものです。「不可視印刷はブラックライトで表示するのが一般的ですが、周りの色素が退色してしまうといった課題があります。そこで、赤外光で表示できる耐久性の高いインクにするため、アンチモンとスズの配合割合を変えて研究を進めてきました。通常、ATOは青みがかったグレーになり、無色透明に近づける配合では赤外光の反応が悪くなってしまうため苦労しました。赤外光で読み取れるギリギリの割合を導き出し、台紙に赤や緑、青といった色を付けることで不可視の二次元コードの作成に成功しました」と振り返ります。
中村さんは高校時代、軽音楽部に所属し、照明係を担当したことから光に興味を持ったと言います。工学部光・画像工学科に進学後、前田秀一教授(現・情報理工学部情報メディア学科)の下で研究に着手。4年次生のときはコロナの影響で実験の時間も限られましたが、類似文献の分析といった準備を進め、大学院に進学してからインクの配合や印刷を繰り返して研究を進めてきました。「ディスプレイで表示した色と実際に印刷した色では異なるので、何度もやり直してやっと形にできました。目の前のことに夢中になって取り組んできた3年間だったので、その成果が評価されてうれしい」と笑顔を見せました。