大学院工学研究科の松本さんが「毎日・DAS学生デザイン賞」で「佐野正一賞」を受賞しました

大学院工学研究科建築土木学専攻1年次生の松本乙希さん(指導教員=野口直人助教)がこのほど、「毎日・DAS学生デザイン賞」の「大学生の部 金の卵賞」で建築部門を対象とする「佐野正一賞」を受賞。

5月20日にオンラインで表彰式が行われました。毎日新聞社と一般社団法人総合デザイナー協会DASが主催する大学(短大・大学院)、高等専門学校、専修学校専門課程の在学生を対象としたコンペティションで、建築部門、グラフィック部門など6部門で在学中に制作した作品を募集するものです。松本さんは工学部建築学科での卒業設計として制作した「真鶴を継ぐ~修繕によって蘇る採石場の新たな風景~」を出展。建築学科卒業設計の「TD賞(最優秀学士設計賞・計画系)」と「東海大学建築学会(KDA)優秀賞」に続いての受賞となりました。

松本さんが題材とした神奈川県真鶴町の採石場では日本三大名石の一つである「本小松石」が採掘され、源頼朝の墓石や長谷の大仏、江戸城の石垣などの大規模な事業に使われる歴史のある石です。松本さんは、「実家の隣町である真鶴には石材屋を営む親戚もおり、現在では産業が低迷傾向で困っています。現在も一部で採石が行われる一方、採掘が終わった場所は埋め戻され、まちの生業の痕跡が消失しようとしています。しかし、歴史のある美しい風景を単なる地形の修復によって隠してしまうのはもったいないと感じ、陶器の修繕方法である金継ぎの特性を用いて痕跡を生かせないかと考えました」と話します。点在する採石場を屋根でつなぎ、地形を生かした施設に転用する案を考案。岩場に付着する塩分を摂取し、牧草を飼料とするヤギの放牧地をつくり、堆肥を使った農作物の栽培や加工品の販売といった新たな産業を生み出すほか、露天掘りの地形特有の音響を生かした屋外ホールを設置。石材加工場は見学可能とし、石の展示と販売、自然公園や地元の農漁業産品を販売する「道の駅」も設けました。審査員からは、「今は見ることの少ない陶器の修復方法である金継ぎに着目し、採石場を蘇らせる提案のコンセプトが素晴らしい」といった講評を受けました。

松本さんは、「深さの異なる採石場を同じ高さの屋根でつなぎ、岩壁を建築空間の構成要素とすることで地形を生かした景色をつくり出せたと感じています。俯瞰してみると真鶴の山に壮大な風景が描かれています。今後も町に根づいている産業の遺産や土地の環境を生かし、そこにしか作れないものを考えていきたい。真鶴についても、海の風景だけでなく山の魅力を伝えていければ」と展望を語りました。