工学研究科の大学院生らが執筆した論文が科学ジャーナル『Ceramics International』に掲載されました

大学院工学研究科応用理化学専攻1年次生の小橋海斗さん(指導教員=高尻雅之教授・工学部応用化学科)らが執筆した熱を電気に変換する熱電変換材料に関する論文「Low-dimensional heterostructures of tin nanoparticle-decorated Bi₂Te₃ nanoplates for reducing lattice thermal conductivity」が、10月16日付けで科学ジャーナル『Ceramics International』に掲載されました。

高尻教授の研究室ではこれまで、熱変換材料の一つである正六角形型で単結晶の「ビスマス・テルルナノプレート」の生成方法を解明していましたが、さらに性能を高める加工方法は明らかになっていないため、小橋さんはナノプレートの熱伝導率を下げる新たな加工方法を発見しようと、4年次生のころから研究を重ねてきました。熱の流れを妨げるためには、材料に障害物を付着させる必要があり、実験の結果もっとも熱伝導率を下げる効果があった錫に着目。さまざまな濃度の塩化錫の水溶液を使って、ナノプレートに無電解メッキで錫ナノ粒子を付着させました。その後プレス機で圧縮して、厚さ0.6ミリの多結晶のナノプレートを作って熱伝導率を調べると、濃度90ミリモルの塩化錫水溶液を使ったナノプレートは、加工していない多結晶ナノプレートに比べて、熱伝導率が約30パーセント低下したことがわかりました。

指導した高尻教授は、「無電解メッキでナノプレートに錫ナノ粒子をつけられることを明らかにしたのが、一番の功績だと思います。さらに、加工したナノプレートを塊にすると、その内部まで錫ナノ粒子がついている状態になるので、熱伝導率を下げる有効な材料として確立されました」と評価します。小橋さんは、「今後は加工する前のナノプレートそのもののサイズを変えて、より熱伝導率の低い素材を作りたい」と話しました。