大学院生物科学研究科の原川さんの論文が国際誌『Animals (IF3.0)』に掲載されました

大学院生物科学研究科の原川健太郎さんが執筆した論文「リモナイトを与えられた褐毛和牛の頬粘膜スワブサンプルからルーメン微生物叢の変化を解明(Buccal Swab Samples from Japanese Brown Cattle Fed with Limonite Reveal Altered Rumen Microbiome9」が7月3日付で国際誌『Animals (IF3.0)』に掲載されました。

阿蘇の大噴火によってできたカルデラに蓄積したミネラル豊富な天然鉱物「阿蘇黄土(リモナイト)」は牛の健康や発育を改善するとされ、阿蘇地域では昔から妊娠後期の牛に与えられてきました。しかし生体内におけるメカニズムが解明されていないことから、原川さんは、「農家の方々に納得して、安心して使ってもらえる情報を提供したい」と研究に着手しました。具体的には、妊娠後期の褐毛和牛(あか牛)にリモナイトを与え、30日ごとに口腔内からサンプルを取って分析。特定された微生物叢(そう)を6つのクラスターに分類して解析しました。論文では、リモナイトの給餌が非コアルーメン微生物叢を活性化させるとし、妊娠後期に効果的であることを部分的に裏付けているとまとめました。原川さんは、「あか牛に関する日本語の論文は多くありますが、英語の論文は少ないので、こうした成果を国際誌発表できてうれしく感じています。しかし、今回の論文は研究の第一歩であり、まだまだ調査が必要です。現在は子牛の調査や、腸内細菌叢などの調査も進めています」と話しました。

原川さんは九州東海大学農学部を卒業後、大学院農学研究科を経て、企業に就職して農家の販売支援などを担ってきました。「地元の熊本に戻り、今川和彦先生(総合農学研究所所長)に出会って研究者の道に進みました。その世界では一般的とされていることも、裏付けを得ることでより農家や酪農家の力になれる。今回の研究も、阿蘇黄土が牛の成長に効果があると解明できれば、海外から取り寄せている飼料を少なくするなどローコストで生産できます。熊本のあか牛の研究をリードする東海大で、この研究も柱の一つとして取り組み、農業界に貢献していきたい」と今後の展望を語りました。