農学部が熊本市動植物園、熊本市現代美術館と合同シンポジウムを開催しました

農学部では10月18日に、熊本市動植物園と熊本市現代美術館との合同シンポジウム「生き物と自然に出会うための三つのアプローチ ― 動物園・絵本・科学 〜ヒサクニヒコ氏を迎えて〜」を同美術館で開催しました。同動植物園に「サバンナエリア」が新しく整備されることをきっかけに、絵本やイラストを通して自然の不思議や命のきらめきに心が動く瞬間を見つけてほしいとの思いから企画したもの。当日は市民ら約60名が参加しました。

初めに漫画家でイラストレーターのヒサクニヒコ氏が「肉食動物と草食動物と植物と季節が織りなすサバンナの自然」と題して基調講演しました。本会の趣旨として生き物と人間の関係性について考えることを提案したヒサ氏は、日本各地で頻発している熊の出没問題を例に挙げ、共存の難しさを解説。1910年にハブ駆除のために沖縄に持ち込まれたマングースが夜行性ではなかったために本来の目的は達成できず、沖縄固有の生物を捕食して大繁殖した例を挙げ、「外来種の導入が生態系に与える影響は大きく、科学的な根拠なく行動するのは危険」と指摘しました。さらに、野生動物の生態を絵本で伝える重要性や、人々が生態を知るために動物園が重要な役割を果たすことも説明しました。

続いて、同動植物園園長の松本充史氏が「動植物園で感じる自然と生き物たち」をテーマに講演し、開園100周年を4年後に控え、サバンナエリアの新設計画を紹介。動植物園の役割は「感性を育む場」であることを強調し、「自然や動物に対して美しい、素晴らしいと感じる体験が自然や動物を守りたいという気持ちにつながります。心に残る体験を提供することが動植物園の使命」と語りました。本学部動物科学科の伊藤秀一教授は、「データで伝える動物の生活」をテーマに登壇し、アニマルウェルフェアの概念を解説。ウシやキリンの行動データを示しながら、自然環境と飼育環境での違いを説明し、「データに基づいて動物の状態を評価することが大切」とまとめました。

総合討論では、熊本市現代美術館学芸員の冨澤治子氏が司会を務め、3名の講演者が登壇。動物と人間の共存やメディアの報道姿勢と動物の描かれ方などについて意見を交わしました。