総合農学研究所では10月23日に阿蘇くまもと臨空キャンパスで、「第4回ランチョンセミナー」を開催しました。教員の研究内容や最新の研究話題を共有しようと月に1回程度開いているものです。今回は農学部農学科の鯉沼宏章講師が「『博く深く』を目指して―研究の歩みと展望―」をテーマに講演。学生や教職員約30名が参加しました。
鯉沼講師は専門である植物病理学について「植物の病気の原因を理解し、防除につなげる学問」と説明。オレンジが高騰する原因になったカンキツグリーニング病を例に挙げて、植物、病原体、昆虫の三者間相互作用の複雑さを解説しました。また、自身の研究として、病原体「ファイトプラズマ」の昆虫媒介機構の解析や、農業現場での診断技術開発、ソロモン諸島での疫学研究などを紹介しました。
講義の後半では、「出会いが人を作る」という観点から、植物病理学の道に進むきっかけとなった東京大学の難波成任名誉教授と、科学者としての在り方と社会との関わりを学んだ大阪大学の河田聡名誉教授との出会いについて語りました。「博く深く」という研究姿勢の重要性も強調し、「博士(Doctor of Philosophy)の『博』は広く根を張るという意味があります。専門分野を深めると同時に広い視野を持つことが大切」と語りかけました。最後に、現在取り組んでいる研究プロジェクトや今後の展望として、熊本での新しい研究テーマの開拓や、植物の病気を診断する「東海大学植物病院」の開設構想、ソロモン諸島でのさつまいも病害管理システムの実装などについて語り、学生たちに向けて、「信頼できる人の助言を本気にしてトライすることが重要。自分の研究対象以外の外の世界にも触れ、視野を広げてください」とメッセージを送りました。

