東海大学では8月24日から28日まで熊本県内で、一般社団法人日本地震予知学会と共同で国際シンポジウム「EMSEV2026 in Kumamoto」を開催しました。EMSEVは「地震・火山に関する電磁現象国際ワーキンググループ」で、1980年代に世界各地で地震発生直前の電磁気学的な異常が報告され始めたことを背景に、本学海洋学部教授を務めた故・上田誠也氏(東京大学名誉教授、日本学士院会員)が中心となって設立したもので、学術総会は2年に1度開かれています。




シンポジウム開催を記念して23日には熊本城ホールで、一般公開講座「熊本地震から10年、東日本大震災から15年―なぜ起きたのか:令和8年熊本地震の解明と展望―」を開きました。地震研究の最新成果や防災・減災に向けた大学の取り組みなどを市民に紹介するものです。初めに、7月28日に熊本県内で発生した地震で亡くなられた方々に黙とうをささげ、木之内均副学長(九州キャンパス長)が開会のあいさつとして災害への備えを継続して考える重要性や、研究者から最新の知見を聞く講座の意義を語りました。来賓を代表してあいさつした熊本県の木村敬知事は、「今回の地震では10年前の教訓が生かされた場面が多々ありました。被災された皆さまの一日も早い生活再建と復旧・復興に向け、地元市町村とともに取り組んでいきたい」と話しました。また、大西一史熊本市長は、「地震はいつ起きるか分からず、熊本でも繰り返し起こっています。だからこそ科学的に解明し、情報を共有していくことが大切です」と本イベントに期待を寄せました。






続いて3名の基調講演を実施。本学の木村英樹学長は、「平成28年熊本地震発生直後の支援活動」と題し、2016年の熊本地震の際に湘南キャンパスから阿蘇キャンパス(現・阿蘇フィールド)にトラックで発電機や仮設トイレ、食料品などの救援物資を届けた経緯を紹介。断層がキャンパス内の建物を貫くなどの大きな被害が生じ、学生3名が尊い命を失なったことを振り返るとともに、学生や教職員が取り組んだ復興支援活動についても説明しました。 また、災害時の通信確保に向けた衛星通信機器の配備や、海洋調査研修船「望星丸」を活用した災害医療実証訓練といった取り組みにも言及。「平時から技術や財源を確保し、さまざまな機関との連携体制を構築・維持しておくことが重要」とまとめました。静岡県立大学の楠城一嘉特任教授は「現在の熊本の地震学的な状況について」と題して講演。プレートや活断層の仕組みを解説したうえで、2016年の熊本地震と今回の地震との関係を、断層のうち過去の地震で破壊されずに残った部分を指す「割れ残り」という考え方から説明しました。日本地震予知学会会長で本学海洋研究所の長尾年恭客員教授は「地震予知研究の新展開」をテーマに、巨大地震の直前に電離層で観測される電子密度の変化に着目した研究や、地震発生予測と津波予測への応用に向けた検証について紹介しました。その後は、2016年の熊本地震当時に農学部長を務めた荒木朋洋九州キャンパス長付が、阿蘇キャンパスでの被災体験を報告。学生アパートの倒壊や救助活動、体育館を活用した避難所の開設・運営、救援物資の受け入れなどを振り返り、大学と地域が連携して災害に備える大切さを語りました。


国際シンポジウムは、24日に阿蘇くまもと臨空キャンパスでポスターセッションを開始。25日には同キャンパスで開会式や基調講演、学術セッションが行われ、農学部の星良和学部長も登壇。2016年熊本地震で大きな被害を受けた阿蘇キャンパスの当時の様子や阿蘇くまもと臨空キャンパスを開設して農学部の教育・研究が再開されるまでの道のりなどを紹介しました。午後には東海大学の旧阿蘇キャンパスを活用した熊本地震震災ミュージアムKIOKUと阿蘇火山の巡検が行われ、26日から28日までは熊本市国際交流会館を会場に研究発表やEMSEVのビジネスミーティングを実施。国内外の研究者が地震・火山活動に伴う電磁気現象について最新の研究成果を共有しました。