海洋学部の中村雅子教授が参加する研究グループがこのほど、2024年に日本沿岸で発生した記録的な海洋熱波により、石垣島や沖縄島などのサンゴ礁海域から本州沿岸まで、広範囲でサンゴが白化したことを明らかにしました。成果をまとめた論文が8月25日付で国際学術誌『Scientific Reports』に掲載されました。

海洋熱波は、海水温が平年より著しく高い状態が続く現象です。サンゴは高水温にさらされると体内の共生藻類を失い、白化します。近年は温暖化に伴い、熱帯・亜熱帯の一部のサンゴが本州などの高緯度域へ分布を広げています。今回の研究は、琉球大学の栗原晴子教授を中心に、東京大学の山野博哉教授と安田仁奈教授、特定非営利活動法人OWSの横山耕作代表理事、東北大学の安中さやか教授、和歌山県立南紀熊野ジオパークセンターの本郷宙軌主査研究員、そして本学の中村教授が参加。日本の黒潮流域沿岸8地点で海面水温と高水温ストレスの蓄積を示す指標「DHW」を解析し、サンゴの白化状況を調査しました。
その結果、DHW全8地点で、大規模な白化や死滅のリスクが高まるとされる8を超え、対馬(長崎県)は19.1、田子島(静岡県)は18.7、沼津(静岡県)は17.2と、いずれも過去約40年間で最高値を記録。田子島と沼津では23年に続き2年連続で白化し、24年の白化率は60~70%に達しました。竜串(高知県)や対馬でも大規模な白化や死滅が確認され、高緯度域へ分布を広げているミドリイシ属にも影響が及びました。一方、館山(千葉県)ではDHWが12.0を超えたものの、白化は確認されなかったことから、白化の起こりやすさには海水温だけでなく、サンゴの種類や地域の環境、過去に経験した水温なども関係すると考えられるとしています。中村教授は、「サンゴの種類や数は、その年の気候や海の状況によって変動します。今回の結果だけで将来の変化を判断することはできません。だからこそ、定期的なモニタリングを重ね、長期的にデータを蓄積することが重要です。今後は地域やサンゴの種類による高水温への耐性の違いや、白化後の回復、サンゴ群集の変化を調べていきたい」と話しています。
論文出展
Kurihara H, Yamano H, Yokoyama K, Yasunaka S, Yasuda N, Hongo C, Nakamura M, Nagamine T (2026) Widespread coral bleaching across subtropical and temperate Japan under record marine heat stress. Scientific Reports 16:25697. https://doi.org/10.1038/s41598-026-65095-2