静岡キャンパスで東海大学海洋研究所のシンポジウム「海洋ロボティックスの現状と展望そして人材育成」を開催しました

東海大学海洋研究所では7月2日に、静岡キャンパス8号館4階のPLATとオンラインでシンポジウム「海洋ロボティックスの現状と展望そして人材育成―学産官コミュニティーの連携を目指して―」を開催しました。ハードウェアやそれをコントロールするソフトウェアだけでなく、ネットワークや人工知能、人工知性を含む非生物的なシステムの総体である海洋ロボティックスは、今後のブルーエコノミーを推進する主役となり得るものであり、厳しい環境下での海洋開発や未踏の領域探査において、その果たす役割は今後ますます重要とされています。今回は、大学、研究機関、民間の連携を目指すとともに、海洋ロボティックスの現状と展望を俯瞰し、その中で今後のビジネスや活躍の場、人材育成システムのあり方を考える機会にしようと企画されました。

当日は会場に約50名、オンラインで約120名が参加する中、初めに海洋研究所の平朝彦所長が趣旨説明を行い、「以前から海洋ロボティックス分野でも開発者側と運用者側の間には谷があり、双方のコミュニケーションが足りていない現状を感じていました。課題解決に向けては人材の質がカギであり、幅広い人材育成が求められます。本日のシンポジウムでは、将来を担う学生と産官学の専門家による対話という珍しい試みもあり、将来に繋がっていくものと期待しています」と述べました。続いて内閣府総合海洋政策推進事務局海洋産業タスクフォースの高島正行氏があいさつ。海洋資源開発技術プラットフォームへの協力体制を説明するとともに、「海洋開発を巡る課題の解決には今後とも産官学連携の推進が肝要です。熱気のこもったシンポジウムとなることを期待しています」と語りました。続いて「海洋ロボティックスの現状と展望」をテーマに、内閣府のプロジェクトや研究機関、海洋開発に携わる企業の担当者らが講演し(プログラムは以下参照)、深海探査技術を中心にそれぞれが取り組んでいる機器開発や調査の状況を紹介しました。

後半は「若手人材(大学生ら)と今後の海洋ロボティックスの展望についての対話」と題し、コーディネーターをつとめたSIP革新的深海資源調査技術サブプログラムディレクターの東垣氏の進行で、本学海洋学部の渡邉啓介教授の研究室と坂上憲光教授の研究室をはじめ長崎大学、九州工業大学、東京海洋大学、高知工業高等専門学校の学生たちがオンラインで発表。自分たちが取り組んでいる研究活動や海洋ロボティックスに求めること、多様な技術の実現可能性などについてそれぞれの意見を述べました。さらに、学生たちからシンポジウム内で紹介された最先端研究の現状や今後の展望に関する熱心な質問が寄せられたほか、研究機関や企業側の参加者からは学生たちに向けて将来技術者としての活躍に期待する声などが寄せられました。

講評・総括では、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の大和裕幸理事長が登壇。「海洋ロボティックス分野全体をシステムとして俯瞰してみることが大切であり、諸外国と競うためにも海洋と生活をともにする我々が持つ技術、日本製のシステムが持てる強みを発揮しなくてはなりません。将来の課題を的確に見つめた会となりました」とまとめました。また、閉会の挨拶では、本学の山田清志学長が関係者への謝辞とともに、「海洋資源開発において、四方を海に囲まれた日本には多くの潜在的資源があります。本学でもその分野に取り組む学生がおり、将来の日本、世界に有為な人材育成に今後も取り組んでいきたい。また、技術系の人材だけですべてを解決できるものではないため、この4月に静岡キャンパスに新たに人文学部も設置しました。幅広い人材育成をもって成功に導けるのではないかと考えています。本日は、産官学から関係する皆様にご参加いただきました。その連携によって成果を実りあるものにしていきたい」と語りました。

プログラムは以下の通りです。

1:趣旨説明 東海大学海洋研究所 平朝彦所長
2:挨拶 内閣府総合海洋政策推進事務局海洋産業タスクフォース 高島正之氏
3:海洋ロボティックスの現状と展望
 (1)「SIP革新的深海資源調査技術」における海洋ロボティックスの研究開発の成果
SIP革新的深海資源調査技術プログラムディレクター 石井正一氏
 (2)学術研究を推進するための海洋ロボティックスの開発の現状と展望
海洋研究開発機構 中谷武志氏
 (3)海洋ロボティックスの国内海洋ビジネスの展望
・AUV「SPICE」北海へ そして更なる活躍の場を求めて
 川崎重工(株)エグゼクティブフェロー 湯浅鉄二氏
・海洋探査機「江戸っ子1号シリーズ」を活用した
新たな海洋環境影響評価・調査事業への展望
 いであ(株)常務執行役員 峯岸宣遠氏
・洋上風力発電事業における海洋ロボティックス
 東洋エンジニアリング(株)シニア・プリンシパル 佐藤弘志氏
4:若手人材(大学生ら)と今後の海洋ロボティックスの展望についての対話
参加校:東海大学、長崎大学、九州工業大学、東京海洋大学、高知工業高等専門学校など
コーディネーター:SIP革新的深海資源調査技術サブプログラムディレクター 東垣氏
5:講評・総括 海洋研究開発機構理事長 大和裕幸氏
6:閉会挨拶 東海大学 山田清志学長