「誰もが輝く! TOKAI QOLセミナー」で医師・小説家の南杏子氏が講演しました

東海大学では7月8日に湘南校舎2号館大ホールで、「誰もが輝く! TOKAI QOLセミナー」を開催。本学医学部卒業生の医師で、小説家としても活躍する南杏子氏が講演しました。本学では3月20日に、「東海大学ダイバーシティ推進宣言および基本方針」を山田清志学長名で発表しています。このセミナーは宣言に基づく活動の一環として、東海大学として主催。働き方や教育・研究のよりよい環境づくりを目指して自主的に活動している教職員グループ「クロスロード・フォーラム」、健康学部(ウェルネスカレッジ)共催、キャンパスサポートオフィス(ダイバーシティ推進担当ほか関係担当)、ウェルネスカレッジオフィス、ビーワンオフィスの運営協力を得て開いたものです。南氏による基調講演や対談・インタビューを実施。オンラインも併用し、教職員や学生ら235名が参加しました。

初めに健康学部の堀真奈美学部長があいさつし、「人生のライフステージ、働き方は人それぞれで多様だと思いますが、南杏子さんの作品や生き方から学ぶことが多数あると思います。本日のセミナーを通じて、多様な人々が尊重し合い、誰もが最後まで生き生きと輝ける社会の実現に向かって何が必要かをそれぞれが前向きに考えるきっかけになれば幸いです。ダイバーシティの推進やQOLの向上に生かすとともに、学内外に広めていければ」と述べました。続く開式の辞では山田学長が、「世界では悲しい出来事が起きていますが、南先生のお話を皆で分かち合い、命の大切さを再認識したいと思います」と語りました。その後、ダイバーシティ推進を担当しているユニバーシティビューローの辻由希ゼネラルマネージャー(キャンパスライフ担当・政治経済学部教授)が、「東海大学ダイバーシティ推進宣言および基本方針」に基づく学内での取り組みを紹介し、「本学で学び、働く、すべての皆さんの個性を尊重しながら、それぞれの能力を十分に発揮できる環境を整えていきます」と語りました。

セミナーの前半では南氏が、「医師として、小説家として、伝えたいこと」と題して基調講演。南氏は、日本女子大学を卒業後、出版社勤務などを経て1994年に本学医学部に編入学し、高齢者医療に携わるようになった経緯を振り返り、「東海大学での学びが人生のターニングポイントになりました。96年から医学部長を務められた黒川清先生(現・東海大学特別栄誉教授)が、他大学に先駆けて導入されたクリニカルクラークシップ(診療参加型臨床実習)の恩恵にあずかることもでき、幸せな学生生活でした」と語りました。続いて、高齢者がフレイル(身体的、精神的、社会的な虚弱)から要介護状態を経て老衰死に至る過程について具体的な事例をもとに解説し、「一般的な医療の常識と異なり、治療しても回復できないのが高齢者医療の特徴です。診療を続ける中で、検査や投薬といった心身の負担になる過剰な医療は避けて、患者さんの心地よさを優先すべきではないかと考えるようになりました」と説明。「終末期の患者さんには、適切な医療と生活援助が受けられるとともに、本人の尊厳やプライドを保ち、生きることに対する張りや意欲を持てる環境を確保することが大切です。迷ったときには、“この医療が患者さんやご家族にとって幸せかどうか”を基準にして診療に臨んでいます」と語り、高齢者医療に携わる医師としての迷いや思いを昇華させた小説『サイレント・ブレス 看取りのカルテ』など自身の作品について紹介しました。

後半は、南氏と文化社会学部北欧学科の柴山由理子講師が登壇し、「人生を最後まで輝かせるには?」と題した対談・インタビューを実施。柴山講師がインタビュアーを務め、小説やキャリア形成、仕事と育児の両立、終末期医療とQOLなどについて語り合いました。南氏は、「自らを動かす原動力は好奇心」と語り、未就学児の子育てをしながら医学部のある伊勢原校舎まで片道2時間の電車通学時間を利用して勉学に励んだ日々を紹介。「30歳を超え、2歳の子どもがいた私を受け入れてくれた東海大学では、年齢や性別などを意識することなく学ぶことができました」と振り返りました。また、「医師と小説家は車の両輪」と語り、「医療現場で心に残った言葉を小説に生かすことで、ほかの患者さんや家族をはじめ多くの人に“ほっとする何か”を届けることができます。医師として患者さんの思いを自分自身に定着させるためにも、小説を書くのは大切なことだと思っています」と語りました。最後に参加者に向けて、「“私なんて”という考えは人生をつまらなくしてしまいます。“女性だから”“年を取っているから”などと思わずに、さまざまなことに挑戦してほしい」とメッセージを送りました。

最後に、ダイバーシティ&インクルージョン推進の責任者を務める川上哲太朗学長補佐が、「老いや人生の最後について考える貴重な機会になるとともに、本学が目指すQOL向上などの実現に向けて、多くの示唆をいただきました。ご登壇いただいた南先生と参加者の皆さんに感謝いたします」と、閉会の辞を述べました。