森阪匡通特任講師らの研究グループがシロイルカ(ベルーガ)の鳴音(PS1コール)に個体差が存在し、鳴き交わしていることを明らかにしました

創造科学技術研究機構の森阪匡通特任講師らの研究グループ※が、ベルーガ(シロイルカ)の鳴音の一つであるPS1コールに着目し、個体差が存在すること、そしてこの鳴音が個体の隔離時に発せられるIsolationcallとして機能し、鳴き交わしていることを明らかにし、10月1日にその成果がオープンアクセス国際学術雑誌『Zoological Letters』に掲載されました。さらに出版社のBioMed Centralのブログに記事が掲載されました。

http://blogs.biomedcentral.com/on-biology/2015/10/07/beluga-whales-give-names/

この研究は森阪特任講師が分担者として参画している科学研究費補助金基盤研究(S)「海のこころ、森のこころ─鯨類と霊長類の知性に関する比較認知科学─」(課題番号:23220006)をはじめ、特別研究員奨励費(課題番号:2510729)、挑戦的萌芽研究(課題番号:24657015)などの研究資金の援助のもと進められたものです。

森阪特任講師はこれまでに名古屋港水族館で飼育されているベルーガについて、PS1コールというパルス状の鳴音(「ギー」と聞こえる)を用いてお互いに声をかけ返している、つまり鳴き交わしを行っていることを明らかにしてきました。さらに研究を進めた今回の研究では、隔離状態にすると高頻度でPS1コールが出されること、そして他のパラメータよりもパルス間間隔の変化具合が最も個体内差が少なく、個体間差がはっきりとしていることを実証しました。

森阪特任講師は、「これまでイルカの鳴音の研究ではホイッスルという音が多く研究され、シグネチャーホイッスルという個体特有の鳴音が、あたかも「名前」のように用いられていることが知られてきましたが、シロイルカにおいてはパルス状の鳴音がその役割を担っている可能性があり、個体情報を鳴音にどのように載せるかについては、進化の過程でパルス音からホイッスルに役割を交代した可能性があることがわかりました。今後も研究を続け、私たち人間の「名前」の進化の解明にも、何か一矢報いることができればと考えています」と抱負を語っています。

Individuality embedded in the isolation calls of captive beluga whales (Delphinapterus leucas) Mishima Y, Morisaka T, Itoh M, Matsuo I, Sakaguchi A and Miyamoto Y Zoological Letters 2015, 1:27 (1 October 2015) http://zoologicalletters.biomedcentral.com/articles/10.1186/s40851-015-0028-x

※共同研究グループ参加者(論文順)
東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科 三島由夏(筆頭著者)
名古屋港水族館 伊藤美穂
東北学院大学教養学部 松尾行雄教授
東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科 坂口藍子
東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科 宮本佳則准教授