田口講師が「光学調査からみたゴッホ ポーラ美術館収蔵作品を中心に」のテーマで講演しました

創造科学技術研究機構の田口かおり講師が6月15日に神奈川県箱根町のポーラ美術館で、スペシャルギャラリートーク「光学調査からみたゴッホ ポーラ美術館収蔵作品を中心に」を実施しました。同美術館で開催されている展示会「印象派、記憶への旅」の関連イベントとして実施されたもので、当日は定員を大きく上回る約40名が参加しました。

講演では、ゴッホ研究の歴史を紹介した後、同美術館が所蔵している『草むら』と『あざみの花』『ヴィゲラ運河にかかるグレーズ橋』について、田口講師が森絵画保存修復工房や堀場テクノサービスと共同で光学分析を行った成果や、作品来歴をめぐる新発見について、解説しました。『草むら』の絵具層や裏面を顕微鏡で分析すると、布繊維の一部や絵具片が付着しており、絵具が乾ききる前に他の作品が重ねられた痕跡があり、ゴッホが非常に早いスピードで作品を描いては重ねて保管・輸送していたことや、『あざみの花』を描く際には太さの異なる様々な筆を用い、多様な筆使いで作品を仕上げていったことが明らかになったと紹介。「ゴッホの作品についてこの種の光学的な分析を行ったのは国内2例目で、彼の作品への理解がさらに進むための大きな一歩になりました。今回の調査が、歴史の一端を明らかにするとともに、新たな見地から美術作品を見つめなおすきっかけになれば」と語りました。

講演後には、展示室に移動して、田口講師が実際の作品を見ながらその魅力などを解説。参加者からは、「ゴッホが作品を作る際に、使用する素材を吟味し、よりよい表現技法を模索するなど研究を重ねていたことがよくわかりました」「紫外線やX線で分析すると、作品の軌跡をたどれる点が興味深く、さらにさまざまな美術館と連携した研究によってより正確な事実が判明したことが素晴らしいと感じました。解説を聞いたのちにもう一度作品を見ると、新たな視点で楽しむことができてとても楽しかった」といった感想が聞かれました。

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