情報メディア学科の中谷講師の論文が国際学術誌「Frontiers in Human Neuroscience」に掲載されました

情報通信学部の中谷裕教講師が、「優れた他者に対して抱く尊敬の脳の仕組み」を解明し、その研究成果が8月25日に国際学術誌「Frontiers in Human Neuroscience」に掲載されました。中谷講師は認知脳科学や生体情報工学が専門で、尊敬に基づいた脳の動きを解明し、将来的には対人関係や自己発達に関する知見を教育の現場に役立てようと研究を進めています。

本研究のキーワードとなった「尊敬」にはさまざまな側面があり、他者の優れた行為に焦点を当てる「驚嘆」や「感心」などは「行為焦点尊敬」と呼ばれ、優れた行為を行った他者に焦点を当てる「敬愛」や「心酔」などは「人物焦点尊敬」と呼ばれています。中谷講師の研究室では尊敬の感情を抱く脳の仕組みを解明するべく、MRI装置を用いて、脳機能イメージング実験を行っています。2019年に国際学術誌「Neuroscience Research」に掲載された研究では、行為焦点尊敬と人物焦点尊敬に関わる脳の仕組みには共通点が多く、主に脳の側頭極前部と帯状回後部が関与していることが分かりました。側頭極前部は「意味記憶」と呼ばれる知識や概念に関する情報に関わる重要な部分とされており、また帯状回後部は自分自身を基準に、他者を評価する機能を担っています。このことから中谷講師は、側頭極前部にある社会的概念に基づき、帯状回後部で自身を基準に他者を評価することで尊敬という感情が生まれている発表しました。この研究成果をさらに発展させたのが今回の論文です。尊敬感情の抱きやすさには個人差があります。この個人差を生み出している脳の仕組みを調べるために、数多くの被験者にアンケートや脳機能イメージング実験を実施したところ、尊敬感情を抱きやすい人はそうでない人に比べて側頭極前部の灰白質の容積が小さいという結果が得られました。これらの結果から、側頭極前部は尊敬感情の生成において主要な役割を果たしている脳部位であると考えられます。

中谷講師は、「プロ棋士の直感と脳科学」もテーマにした研究も展開しており、これらの研究成果は雑誌『AERA 10月5日号』(朝日新聞出版)でも紹介されています。中谷講師は、「研究成果がさまざまな媒体で紹介されることは大変光栄であり、研究への意欲にもつながります。今後もさまざまな研究機関との連携を進め、新たな成果を生み出していきたい」と抱負を語っています。